相対音感の鍛え方

相対音感の鍛え方

相対音感はインプットとアウトプットで鍛える

絶対音感とは基準となる音無しに音名をすぐに判別できる感覚で、相対音感は基準となる音と比較して音の高低を把握し音名を判別できる感覚のことを指します。音楽を学ぶ場合、絶対音感を身に付けていると音を瞬間的に正確に理解し再現できるため有利とされていますが、幼児期にしか身に付けることが難しいとされています。相対音感は後天的に身に付けることが可能な能力とされており、年齢を問わず、鍛え方によって強化できます。

日本の義務教育でも、音楽の授業で相対音感を育てる移動ド唱法と呼ばれる歌唱法が実施されています。その方法は、例えばハ長調でドから歌い始める曲をト長調のソから歌い始める場合でも、音の読み方を変えずに「ド」から歌います。移動ド唱法に対し、固定ド唱法は各音に対応した正確な音名を割り当てて歌う方法です。移動ド唱法は、相対音感の鍛え方としては役立つ場合もありますが、絶対音感を持つ方にとっては混乱が生じて歌えないこともあります。

ポップスやロックなどのポピュラー音楽では、相対音感の能力が求められる場面が多くあります。カラオケで歌うときに、伴奏の音程に合わせて歌のキーを変えるときにも有効に働きます。相対音感を鍛えるには、音を聴き分けるインプットの力と同時に、発声することや楽器を演奏するなどの正確な音程をアウトプットする力が必要です。英語を習得する際に、リスニングもスピーキングも重要なのと同じ関係性と言えます。ボーカルの場合は、出したい音が出せるように声帯や体の使い方を考え、発声をコントロールします。楽器の演奏ではピアノの鍵盤や、ギターの指版の位置と音を把握することが必要です。

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相対音感を着実に鍛える方法の紹介

相対音感のインプットの力を鍛える方法として、ドレミで旋律を歌う訓練を繰り返すと、旋律と音名をリンクさせられるようになります。アウトプットの鍛え方には、旋律を聴いて音名を判別する方法、逆に五線譜の音名を見て旋律を奏でる方法の2通りがあります。音源から鳴っている音名やコードを特定するスキルを耳コピと言います。これができると即興演奏やアレンジに役立ちます。

旋律を聴いて音名を判別する力は、お馴染みの曲や知らない曲の旋律を音名に変換したり、目をつぶったままピアノの鍵盤をランダムに鳴らして音名を当てたりする鍛え方があります。音名から旋律を弾く力は紙にランダムに音名を書き、ピアノやギターで音を鳴らし旋律を歌ったり、知っている旋律や即興的なフレーズを楽器で演奏する前に歌い、音程が合っているか確認したりする鍛え方があります。インプットとアウトプットのトレーニングを繰り返していくと、耳コピの能力も鍛えられます。楽器の演奏やコーラスを耳コピすると相対音感を鍛えられます。

ピアノやギターなど、コードを使用して楽器を演奏できる方は、知っている曲の伴奏の音源から耳コピすると良いでしょう。1つの単音同士の音程感と、コードの音を聴き分ける力を鍛えられます。コーラスを耳コピすると、インプットとアウトプットの両方を鍛錬することができます。コーラスのパートごとに細かい違いがあるので、音の正確な聴き取りと発音が重要になります。同じ音を伸ばしたり切ったりするなど、アドリブ演奏をするとさらに鍛えられます。

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耳コピで注意するポイント

耳コピは、音階や和音、コード進行を判別する音感が必要とされるので、相対音感の鍛え方として効果的な方法です。音の読み方には「音名」と「階名」があります。音名は音の絶対的な高さに付いている名称で、階名はある音が音階のなかでどのような相対的位置を占めるかを示す名称です。音を正しく認識するためには、音名を判別できる力が欠かせません。和音の認識においては、必ずしも一つひとつの構成音を聴き分ける必要はなく、音の響きの特徴を捉えられれば概ね問題ありません。一番低い和音のベースとなる音が、どの調性のどの音名なのかを判別するのがコツです。

コード進行は、和音が曲の進行とともに変化していく流れを掴む感覚が必要です。耳コピをするのが難しく苦戦するケースも多いですが、その原因は主に3つあります。
1つは元々の相対音感の基本的な能力が低く、習熟できていないことが挙げられます。能力を高め習熟させるには、1オクターブの音階をしっかりイメージできるように訓練すると良いでしょう。2つ目の原因は、基準音をしっかり識別できていないことが挙げられます。楽器の音で探さずに、自分の耳で直に基準音を判別できるように鍛えましょう。音質の良い音源、イコライザーの調整、繰り返し聴くために再生デバイスの操作がしやすいなどに注意して、正確に基準音を聴くようにします。3つ目は、耳コピをしながら演奏してしまうことです。耳コピは、音を聴き取って後で演奏することが目的ですが、まずは耳コピに集中することが重要です。

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ピアノで実践的に相対音感を身につける

より実践的に相対音感を身につけるには、ピアノを習うことがおすすめです。ピアノは予め平均律で調律がされている音程が定まっている楽器ですので、例えば、歌やヴァイオリン等のように自分の音感を頼りに音程をつくる必要がありません。基準となる音が予め定まっているので、ピアノの演奏者は音程を意識しなくても、楽譜を読んでピアノを弾いていく間に自然と正しい相対音感が身についていく効果が期待できます。

また、ピアノの鍵盤は、低い音は左側に、高い音は右側に、というように1つ1つの鍵盤が低い音から高い音に向かって順番に並んでいます。つまり、誰でも容易に高い音と低い音の相対的な関係性を鍵盤の位置を目で見て確認することができます。これが他の楽器と比べてピアノが相対音感を自然に身につける上で有利なポイントの1つです。

音楽大学などの専門的な教育機関でも、どの楽器を専門とする場合でも副科ピアノという形でピアノを学ぶことがほとんどです。ピアノを学ぶことで、相対音感だけでなく、和声や複数の旋律の関係性などにも触れることになり、音楽の基礎を総合的に学ぶ上では最も効果的な楽器だといえるでしょう。

相対音感に特に効果的な練習方法として、スケール(音階)、アルペジオ(分散和音)を24の全ての調性でマスターすることでしょう。これは、相対音感だけでなくピアノの基礎技術の習得としても欠かせない訓練といえます。

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