フルートの歴史について

フルート

フルートの祖先は旧石器時代に誕生

現在、フルートというと木管楽器で横笛を指しますが、古くは横笛に限らず、笛一般を指すものでした。
フルートをリードを使わず、管の空洞に息を吹き込み音を出す楽器と広い意味に捉えれば、約4万年前の旧石器時代に動物の骨で作られた笛が原型になります。数千年前に動物の骨で作られた笛も各地で出土し、博物館に納められています。多くはアシなどの植物で作られているか、オカリナのような土笛や石笛で原始的なものでした。

そこから現代につながる横笛に発展したのがいつなのか、はっきり確かめられていません。ある説では紀元前9世紀かそれ以前に中央アジアで生まれ、シルクロードを経由して中国やインドに伝わった歴史があるとされます。その後、東方の日本や西方のヨーロッパにも横笛が伝えられたとみられます。日本では正倉院の宝物に岩石でできた横笛があり、東大寺大仏殿の正面には横笛を吹く菩薩像があります。これらのことから奈良時代の頃には、海を渡って日本に横笛の原型が伝わったことになります。

ヨーロッパでは古くから親しまれたリコーダーの縦笛があり、リコーダーがフルートと呼ばれていました。ヨーロッパでは一般に横笛は楽器とはみなされず、旅芸人や楽隊の演奏に使われる程度でした。16世紀に盛んになった市民の合奏で横笛が使われたことで脚光を浴び、ルネサンス・フルートと呼ばれ、現在も古楽器として復元されています。管の両端の直径が同じ円筒形で、音程を出すトーンホールが六つ、キーはありません。ソプラノやアルト、テナーなどの音程ごとに種類がありますが、円筒形という管体のため、強くて鋭い音だったり、弱くてくぐもった音だったりと音色や音量に統一感がありませんでした。

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バロックから古典派、ロマン派の時代

ピッチの調節ができず、半音が難しく、音の高低の違いが大きいルネサンス・フルートは、17世紀初めのバロック時代に入ってから不人気となります。18世紀近くになって新たな工夫が加えられ、改良されたことで横笛が急速に普及します。円筒形から円錐形に変わり、低い音から高い音まで音色が均一になり、いくつかの継ぎ目を作ったことで細かい音程の調整ができるようになりました。音程を出すトーンホールが七つに増え、一つはキーを使用し、半音が簡単に出せるようになります。

現在、この楽器は1キーフルートと呼ばれて今でも人気があり、復元楽器が多く製作されています。バロック時代は他にも実験的な改良が行われ、ガラスや陶器などの材質で試作されたり、フラットとシャープの音を吹き分けるキーを取り付けたりしています。18世紀半ばから始まった古典派の時代はもっと多くのさまざまな種類が作られます。半音を安定させるために改善したトーンホールや開閉キー、高音が出やすいように管の直径を小さくするなどの改良が行われます。

18世紀半ばから19世紀初頭のロマン派の時代に作られた楽曲では半音が多く用いられたので、半音を出しやすくするため、キーの数が増やされました。その代わり、演奏するときの指の運びが複雑になり、楽器ごとに指の運びが異なる事態を招きます。この頃には表現力が乏しい縦笛はすっかり廃れ、歴史的に横笛がフルートの代名詞となります。

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現代フルートの原型が登場した後の歴史

1830年代にドイツ人のフルート奏者で製作者でもあるテオバルト・ベームが、本格的で大規模な改良を行います。これまでよりトーンホールを大きくしたことで、大きな音が出せるようになり、指1本で複数のキーを動かせるリングキーを取り入れました。さまざまな材質で試作し、ミュンヘンにある大学で音響学を学び、従来は職人の技術や経験に頼っていた楽器製作を、物理学を用いた緻密な計算で設計変更します。円錐管だった形状が放物線状の頭部管と円筒管の本体と足部管になり、音色がより安定し、音量も大きくなりました。

その結果、指の運びが伝統的な奏法とは大きく変わることになります。ベーム式フルートは演奏の可能性を広げ、楽器の質の高さが認められ、パリ音楽院の公式楽器に指定されます。フランスの有名楽器製作者が製造し、イギリスでも広まりますが、発祥地のドイツでは保守的な考えが強く、なかなか受け入れられませんでした。ドイツで普及するのは20世紀に入ってからという歴史があります。1847年に銀を材質にし、すべてのトーンホールにカバーをつけた新式のベーム・フルートを発表します。

これが現代につながる原型で、今の形状とほとんど変わりません。それから厳密に設計を見直し、修正したものがいくつか作られます。1950年代に発表されたイギリスの製作者アルベルト・クーパーによるクーパースケール、1980年代にはキーの摩擦問題を解決するブロガーシステムが発表されます。現在も微分音を簡単に演奏できるシステムや、コンピューターに接続して演奏するMIDIフルートなど改良の歴史は続いています。

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