教養としての音楽

ピアノが選ばれる理由

子育て情報を提供している民間会社が2019年に実施した子供の習い事ランキングによると、3歳から5歳児、6歳以上に人気の習い事は1位がスイミング、2位が体操、3位がピアノとなっています。別の調査では、子供にピアノを習わせる理由を保護者から直接聞いて分析した結果、ピアニストを生み出すためではなく、音楽の素養を高めたいと考えているからとまとめています。素養とは、日ごろからの練習や努力を重ねた結果獲得する知識やたしなみで、これをさらに高い次元まで昇華すると教養となります。

そういった目的であれば、楽器はバイオリンでもフルートでもいいわけですが、ある脳科学者は、ピアノは脳に良い影響を与える習い事であると分析しています。

その第1の理由として、ピアノは音楽の基礎を学ぶうえで最適な楽器として位置づけられているためです。鍵盤の数は88と音域が非常に広く、しかも一つの鍵盤は常に安定して一つの音階の音しか出さないので、基礎を学ぶ方も、基礎を教える方も使いやすい楽器です

。第2に、ピアノは両手を使い、それぞれのパートの楽譜を同時に読むうえに、足を使ってペダルを踏む作業も並行して行います。さまざまな作業を同時にこなす必要があるので、何か特別なことをせずとも自然に脳が活性化していくのです。右脳と左脳をバランスよく発達させてくれる効果があり、記憶力や運動能力、表現力アップにつながるとされています。

教養の定義と音楽との関係

人に対して教養があるという言い方をしますが、その教養と混同されやすいのが博識です。博識とは、専門的知識から雑学や豆知識まで、幅広い情報を持っていることを指します。これに対し教養とは、ただ物知りなだけではなく、まず自分が得たさまざまな知識をより深い洞察力や創造力によって適切な判断能力を発揮します。

そして、自己と他者との関係や社会とのかかわりの中で生かすことを指します。例えば、社交の場でもプライベートな場面でも、常に洗練された会話ができ、優雅な身のこなしが自然に備わっているような人物を教養がある人物と言います。

音楽の教養を深めるという意味では、ジャズもソウルミュージックもありますが、一般的な習い事としてはクラシックが代表的存在です。かつて、上流階級社会において擁護されたクラシックは、現代においては一般市民も気軽に楽しめるものとなりました。

歴史の流れの中で、クラシックは大きな変化と進化を続けています。ピアノ教室などでクラシックを演奏する技術を磨く過程では、単なるテクニックだけでなく、クラシックの時代区分を十分理解するようにしましょう。なぜ表現が変化していったのか、その時代に何が起きたのかといった歴史的な側面からの理解を深め、文学や美術など音楽以外の分野からも楽曲を鑑賞できる視点を蓄積していくことが大切です。

そうすれば、あらゆることに音楽を結び付けて考えたり見たりすることができるようになり、音楽を教養として生かせるようになっていきます。

教養としてクラシック音楽の歴史を知ろう

クラシックには長い歴史があります。教養としての音楽を身に着けるのであれば、それぞれの時代区分の特性や、なぜそういう流れになったのかという歴史的な背景を知ったり、著名な作曲家の代表曲を鑑賞したり自ら演奏することが重要になります。

現在クラシックは、おおむね1600年から1750年までのバロック、おおむね1750年から1820年までの古典派、おおむね1820年から1900年までのロマン派、1900年以降を現代クラシックとして四つに区分して考察するのが基本です。14世紀にイタリアで始まった文化運動としてのルネサンスは西欧各国に広がり、やがてバロック期に至ると音楽は教養の一つになっていきます。

バロック様式の作品は貴族への献上品であることが多く、宮廷などで披露するため起伏の激しい華やかな楽曲が多いのが特徴です。西欧における伝統的な教養観は社交界での知的会話やふるまいであり、そのためには音楽は欠かすことができない存在になりました。

18世紀中ごろになると、古典派が台頭します。古典派の楽曲は均斉と合理的展開が特質で、ソナタ形式が発展しました。ハイドン、モーツァルト、ベートーベンら天才作曲家を輩出した時代です。ロマン派は古典派をロマン主義精神によって発展しました。また、ピアノが普及したことで市民が演奏に親しめる環境が整い、楽譜出版産業が発達した時代でもあります。そして現代クラシックに至ります。

有名な作曲家の楽曲を聴いて教養としての音楽を身に着けていくのも良いですが、音楽教室などに通い、実際に弾いて身に着けていくという方法もあります。テクニックだけを学んでも教養にはなりませんが、弾き方を学ぶ、つまり表現方法を学ぶことで、悲しみや喜びといった楽曲のストーリーを読み解けるようになるでしょう。