ヴァイオリンを独学で始めてみたい。あるいは独学で続けているけれど、自分のやり方が合っているのか分からない。この記事は、そう感じている方に向けて書いています。独学で始めること自体は可能です。そのうえで、独学のときに自分で確認しやすいことと、自分だけでは判断しにくいことを整理します。音の出し方や調弦の手順はヴァイオリンの音の出し方で扱っているため、ここでは「確認のしかた」に絞ります。
楽器と弓、教本や動画があれば、音を出すところまでは一人で進めます。小林音楽教室にも、独学で始めてからレッスンに来られる方がいます。独学そのものを否定する理由はありません。
ただ、ヴァイオリンには、自分で評価しにくい要素があります。一つは音程です。ヴァイオリンは、演奏者が自ら指の位置で音程を定めて発音する楽器です。もう一つは構えです。楽器を肩と顎で支え、弓を持つという、日常にはない姿勢をとります。
構えや指の位置が適切でなくても、音そのものは鳴ることがあります。そのため、「音が出た」ことだけではフォームや音程が適切かどうか判断しにくいのが、ヴァイオリンの特徴の一つです。独学に限った話ではありませんが、定期的に外から見てもらう機会がなければ、自分では気づかないまま続けることがあります。
確認したい点を三つ挙げます。いずれも「こうすれば正解」という一つの形を示せるものではなく、だからこそ自己判断が難しい箇所です。
一つ目は構えです。ヴァイオリンの構えは、「足を何センチ開く」「楽器を何度に傾ける」と一つの形へ固定できるものではありません。身体の大きさや腕の長さによって、無理のない構えは変わります。当教室のレッスンでは、それぞれの方の骨格に合った持ち方ができるよう、補助的な道具を使いながら少しずつ形を作っていきます。動画と同じ角度になったから正しい、とは言えないところに、この楽器の難しさがあります。
二つ目は弓の持ち方です。弓は右手の力を抜いて持つのが基本ですが、持とうとすると指に余計な力が入りやすい箇所です。導入として、実際の弓より軽い鉛筆などを使い、手に余計な力を入れずに形を確認する練習方法もあります。ただし、持ち方の細部は指導法によって違いがあり、これも一つの正解に固定できるものではありません。
三つ目は音程です。フレットがないため、指を置く位置を覚えながら、自分の耳でも音程を確かめて整えていきます。チューナーは音の高さを数値で確認する助けになりますが、演奏中に音程を聴き分ける力そのものを代わりに担ってくれるわけではありません。ピアノや音源など基準になる音と比べて聴くことも、耳の基準を作る手立ての一つです。耳と指の位置と音楽の流れを、少しずつ結びつけていく領域です。
確認の助けになるものは四つあります。いずれも「正解を判定してくれる装置」ではなく、自分を観察するための補助です。
鏡は、姿勢や楽器の傾きを目で見るための補助です。ただし、その形が自分の身体に合っているかまでは映しません。チューナーは、開放弦や押さえた音の高さを数値で確認できます。ただし、演奏中の音程感覚そのものを代替するものではありません。録音は、演奏中とは別の立場で自分の音を聴き返せるため、気づく手がかりになります。ただし、何が問題かを判断するには、聴く側にも一定の基準が必要です。録画は、構えと音を同時に見返せる点で鏡と録音の両方を兼ねますが、映っている形が身体に合っているかどうかは、やはり映像だけでは分かりません。
一方で、自分だけでは判断しにくいこともあります。第一に、構えが身体に合っているかどうか。第二に、手指の力み。力が入っていること自体に気づきにくく、鏡にも録音にも現れにくいものです。第三に、耳の基準が定まる前の音程。録音を聴いても、ずれていると判断しにくいことがあります。
こうした点は、経験のある指導者など第三者に見てもらうと、別の視点から確認できます。独学か教室かの二択ではなく、自分で確認できる範囲と、外の目を借りる価値のある範囲を使い分ける、という考え方です。当教室のレッスンでは、持ち方・姿勢・腕や手指の形の確認から始めます。内容はヴァイオリンレッスンの内容で、大人の初心者向けの進み方は大人から始めるヴァイオリンで扱っています。
ヴァイオリンを独学で始めることはできます。ただし、構えや音程は、適切でなくても音は鳴るため、自分だけでは判断しにくい面があります。
鏡・チューナー・録音は、自己観察の補助として役に立ちます。一方、身体に合った構えか、手指に力が入っていないか、耳の基準が定まる前の音程は、第三者に見てもらうことで確認できる範囲です。独学を続けるかレッスンに通うかの二択ではなく、必要に応じて外からの確認を取り入れること。それが、独学で始める方にお伝えしたいことです。楽器の購入・レンタル・維持費の考え方は、ヴァイオリンにかかる費用にまとめています。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」