楽譜の読み方

五線譜と音部記号

一般的な楽譜には音符や記号が五本の線上に配置されており、これを五線譜と言います。五線譜を上下に二列ずつ使ってメロディラインが表されている場合、ピアノの弾き手は上の段が右手、下の段が左手となり、同時進行で演奏していきます。なお、多くの管楽器は上の段が担当となります。

楽譜の読み方の基本は、音部記号です。これは、五線譜の先頭に記載される記号で、例えばト音記号やヘ音記号があります。五線譜と音符だけでは、音符がドレミファソラシドの中のどの音を示しているのか把握することはできません。この音部記号が存在して、始めて音符の音としての高さを把握することができます。

楽譜に記載される音部記号の中でも、特にト音記号は演奏におけるメインパートの場合が多く、ピアノの場合も右手がト音記号の担当になることが多くあります。

ところで、なぜト音記号と名付けられたのかというと、書き出し部分ともなる渦の中心部がトの音に当たるからです。日本では昭和16年にイロハ音名唱法が文部省により義務付けられ、それから昭和21年にドレミ階名唱法になるまでは、ドレミファソラシドをハニホヘトイロハとする読み方がされていました。つまり、トとは当時の読み方におけるソの音のことです。

一方、ヘ音記号は一般的に低音部分を表すもので、ピアノの場合には左手の担当となります。その他、低音を奏でる一部の弦楽器の楽譜もヘ音記号で表されることがあります。ト音記号の場合と同様に、ヘ音記号の書き出しの部分がヘ、つまりファに当たるのでこの名が付けられました。

音符と休符

楽譜の読み方を習得するにあたって、音符の種類と意味についての学習は欠かせません。音符が示しているのは、音の高さだけではありません。同時に、音の長さも示すという役割もあります。

例えば、白抜きの丸だけの音符は全音符と呼ばれ、4分の4拍子で1小節分の長さとなります。全ての音符における長さの指標となる存在でもあります。

この全音符の右上から縦棒が伸びた形の音符は2分音符で、全音符の半分の長さを示します。黒く塗りつぶされた丸に縦棒が付くと4分音符で、2分音符の半分の長さとなります。

一方、4分音符の上に風に揺れる旗のような形状のものが1本付くと8分音符で、4分音符の半分の長さです。旗状のものがさらに2本以上付いた形の音符もあります。旗が1つ増えるごとに、16分音符、32分音符と名前に付く数字も倍数ごとに増えていくのが特徴です。小中学校の音楽の授業は大部分において16分音符までですが、64分音符も存在します。

楽譜の読み方を習得する上で、音符と並んでもう1つ理解が必要なものに休符があります。休符とは、音が鳴っていない状態を示す記号です。全休符と2分休符は横に長い小さな四角形をしています。

全休符は五線譜の上から2段目の線の下にくっ付くような形で表記されます。2分休符は上から3段目の線の上にくっ付くような形で表記され、全休符の半分の長さの休止を示します。一方、4分休符は一般的にもよく見られる稲妻が上から下に走るような形をした記号で、全休符の4分の1の長さの休止を示します。

さらに、8分休符は数字の7の書き出しに黒い丸を付けたような形をしており、全休符の8分の1の長さの休止を示します。なお、その倍の長さの休止を示す16分休符は、黒い丸が付いた横棒がもう1つ増える形です。

その他の記号と拍子

楽譜の読み方をさらに追及していくと、他にも様々な記号があることに気付きます。例えば、シャープやフラットといった記号は変化記号と呼ばれます。井桁のような形のシャープは、半音上げることを意味する記号です。

例えば、ドにシャープが付いていればピアノの場合にはドとレの間にある黒鍵を弾きます。一方、アルファベットの小文字のbのような形をしたフラットは、半音下げることを意味する記号です。レのシャープとなっていればピアノではドとレの間にある黒鍵を弾きます。

花のような形をしたダブルシャープや、フラットが2つ並んだダブルフラットという記号もあります。半音のさらに半音は全音ですから、ダブルシャープは全音上げる、ダブルフラットは全音下げるという意味になります。また、変化記号と対照的なものとして本位記号と呼ばれるものがあります。

それが、ナチュラルです。シャープとフラットの間を取ったような形をしており、変化記号が付いていた音を本来の音に戻すという意味があります。

ところで、変化記号や本位記号は全て音符の左側に付くという原則があります。なぜ左側なのかというと、楽譜は左から右へ進むという読み方をするためです。

もし、音符の右側にこれらの記号が付いていると気付くのが遅れてしまって正しい演奏が難しくなりますが、音符の左側に付いていることによって先に記号が目に入り、スムーズに音を変えることができます。

変化記号と本位記号は、併せて臨時記号とも呼ばれることがあります。臨時記号が有効となるのは、1小節の間だけです。なお、楽譜の冒頭、音部記号の右隣に変化記号が記載されている場合がありますが、これを調号と言います。
調号は楽譜全体つまり1曲の最初から最後までにわたって有効な記号です。

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