楽譜の読み方は、五線譜と音部記号、音符と休符、変化記号、そして拍子という四つの要素を順に押さえていくと、無理なく身につきます。ここでは、はじめて楽譜を読む方に向けて、それぞれの記号が何を表しているのかを、基本から整理して解説します。
楽譜を読むときに押さえたい基本は、次の4点です。

一般的な楽譜では、音符や記号が五本の線の上に配置されています。これを五線譜といいます。ピアノの楽譜のように五線譜を上下二段で使う場合は、上の段が右手、下の段が左手を表し、両手を同時に進めて演奏します。多くの管楽器や声楽の旋律は、単独の五線譜にト音記号で記されることが多くあります。
五線譜の先頭に置かれる記号を音部記号といいます。代表的なものが、ト音記号とヘ音記号です。五線譜と音符だけでは、その音符がドレミファソラシドのどの高さなのかを決められません。音部記号があってはじめて、音の高さが定まります。
ト音記号は、渦の中心がト(ソ)の音を指すことからこの名がつきました。ピアノでは主に右手のパートに使われます。ヘ音記号は、書き出しの部分がヘ(ファ)を指すことからこの名がつき、主に低音部——ピアノでは左手のパートに使われます。
ここで出てくる「ト」「ヘ」は、音名を日本語のイロハで表す読み方です。ドレミファソラシを、ハニホヘトイロと対応させます(ハ=ド、ト=ソ、ヘ=ファ)。同じ音を、ドイツ音名では C・D・E・F・G・A・H と表します(ドイツ音階と呼ばれることもあります)。
音符は、音の高さだけでなく「音の長さ」も表します。基準になるのが全音符で、白抜き(中が白い丸)の形をしています。ここから、長さが半分になるごとに形が変わっていきます。
全音符と2分音符は中が白く(白抜き)、4分音符から先は塗りつぶした丸になります。丸に付く旗(はた)が1本増えるごとに、8分音符、16分音符と長さが半分になっていきます。それぞれの音符には、同じ長さぶん音を休む「休符」が対応します。
| 音符 | 長さ(4分の4拍子) | 対応する休符 |
|---|---|---|
| 全音符 | 4拍(1小節) | 全休符 |
| 2分音符 | 2拍 | 2分休符 |
| 4分音符 | 1拍 | 4分休符 |
| 8分音符 | 2分の1拍 | 8分休符 |
| 16分音符 | 4分の1拍 | 16分休符 |

休符にも形の決まりがあります。全休符は五線譜の上から2本目の線の下にぶら下がるように、2分休符は上から3本目の線の上に乗るように書きます。4分休符は稲妻のような形、8分休符は数字の7に小さな丸を付けたような形をしています。

音を半音だけ上げ下げする記号を、変化記号といいます。井桁のような形のシャープ(♯)は、半音上げる記号です。たとえばドにシャープが付くと、ピアノではドとレの間にある黒鍵を弾きます。
アルファベットの小文字のbに似た形のフラット(♭)は、半音下げる記号です。たとえばレにフラットが付くと、ドとレの間の黒鍵(ド♯と同じ鍵盤)を弾きます。「シのフラット」であれば、ラとシの間の黒鍵を指します。さらに、全音(半音二つ分)上げ下げするダブルシャープ・ダブルフラットもあります。
変化記号で変えた音を、もとの高さに戻す記号がナチュラル(本位記号)です。これらの記号は、必ず音符の左側に付きます。楽譜は左から右へ読むため、先に記号が目に入ることで、スムーズに音を変えられるからです。
変化記号のうち、原則としてその小節内の同じ高さの音に効くものを、臨時記号と呼びます。小節線を越えると、その効力はなくなります。一方、曲の冒頭・音部記号の右隣に置かれる変化記号は調号といい、こちらは曲全体にわたって有効です。

楽譜の冒頭には、拍子記号も置かれます。たとえば4分の4拍子は、1小節に4分音符が4つ分入るという意味で、曲のリズムの枠組みを示します。4分の3拍子であれば、1小節に4分音符3つ分が入ります。
楽譜の見方に慣れないうちは、すべての記号を一度に覚えようとせず、音の高さ・長さ・変化・拍子に分けて読むことが大切です。まず「ドの位置」を基準に、線と間を一つずつ数えて読むことから始めると、身につきやすくなります。音の高さ(音部記号)、音の長さ(音符)、半音の変化(変化記号)を分けて考えると、複雑に見える楽譜も整理して読めるようになります。
楽譜は、記号を暗記するだけでなく、実際に歌ったり、鍵盤で音を出したりしながら読むことで、少しずつ身体に定着していきます。読譜は、視唱(楽譜を見て歌う)や聴音(聴いた音を書き取る)とあわせて学ぶと、より早く身につきます。こうした読譜・視唱・聴音を体系的に学ぶ分野がソルフェージュです。
楽譜は、五線譜と音部記号で「音の高さ」を、音符と休符で「音の長さ」を、変化記号で「半音の上げ下げ」を、拍子記号で「リズムの枠組み」を読み取る仕組みでできています。この四つを分けて押さえれば、はじめての方でも少しずつ読めるようになります。
楽譜を読む力は、単に記号を覚える力ではありません。作曲家が音に込めた意図を読み取り、自分の演奏として表現していくための、大切な入口です。実際に音にしながら読む練習は、独学では迷いやすい部分でもあります。楽器の演奏とあわせて楽譜を読めるようになりたい方はピアノのレッスンへ、読譜・視唱・聴音を体系的に学びたい方はソルフェージュのレッスンへ進むと、目的に合わせて学びやすくなります。小林音楽教室では、専門の講師が読譜の基礎から丁寧にお伝えしています。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」