
音感は、音の高さや音同士の関係を聞き分ける力の総称です。絶対音感は、基準となる音を先に聴かなくても、音の高さを音名として認識したり、指定された音を再現したりする能力を指します。
この記事では、絶対音感の詳しい定義や相対音感との比較ではなく、トレーニングの進め方を中心に解説します。絶対音感そのものについては絶対音感とはをご覧ください。子どもの練習と、大人が取り組める音感の練習を分けて整理しました。
絶対音感は、「ある」「ない」で単純に二分できるものではありません。同じように訓練を受けても、判断できる音の範囲や、答えるまでの速さ、条件が変わったときの安定性には個人差があります。研究でも、成績をはっきり二つの群に分けて捉える見方と、熟達の度合いが連続していると捉える見方の両方があります。
そのため練習を始めるときは、「絶対音感が身についたかどうか」ではなく、次の四つの観点で今どのあたりにいるのかを確かめながら進めます。
| 観点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 音を聴いて答える/音を再現する | 聴いた音を音名で答えられるか。指定された音を歌や演奏で再現できるか |
| 正確さと対応できる音の範囲 | 12の音の高さを、どの程度安定して区別できるか |
| 音色・音域が変わったときの判断 | ピアノで覚えた音を、別の楽器の音や違うオクターブでも判断できるか |
| 反応の速さと安定性 | 基準の音を探さずに答えられるか。日や条件が変わっても同じ結果になるか |
これらは優劣を測るための段階ではなく、次に何を練習するかを決めるための目安です。四つのうちどこにつまずきがあるのかがわかると、やみくもに回数を重ねずに済みます。
絶対音感は、幼児期に音の高さと音名を繰り返し結びつけた経験と関連が深いと考えられています。とくに6〜7歳頃までに音楽学習を始めた人で多く見られるという報告がありますが、年齢だけで習得の可否が決まるわけではなく、早く始めれば身につくと決まっているものでもありません。早い時期から学んでいても、絶対音感が育たない場合もあります。
この時期が挙げられるのは、聞こえの鋭さが発達するからではありません。音の高さをひとつのまとまりとして記憶し、それを音名と結びつける学習が行われやすい時期だからだと説明されます。
なお、絶対音感を持つ人の割合については、調査の対象や判定の基準によって推定値が大きく異なるため、一つの数字で示すことはできません。
トレーニングの進め方は、指導者や教室によって異なります。単音から始めるか、和音から始めるかも一律ではありません。ここでは、多くの方法に共通する基本的な流れを示します。
最初は扱う音を限り、その音を聴いて音名で答える、という往復を繰り返します。大切なのは、答えた直後に正誤を確かめることです。時間が空くと、聴いた印象と音名の結びつきが弱くなり、記憶として残りにくくなります。
一つひとつの音が安定してきたら、扱う音を少しずつ増やしていきます。どこまで安定したら次へ進むかは、その日の調子だけでなく、日をまたいで同じ結果が出るかで判断します。一度できたからといってすぐに増やすと、あとで戻ることになりがちです。
正しく答えられるかだけでなく、基準の音を探さずに答えられているか、提示する順番を変えても同じように答えられるかを確認します。順番そのものを覚えて答えている場合があるためです。答えるまでに時間がかかっているときは、音の高さを直接思い出しているのではなく、別の手がかりを使っている可能性があります。
音の高さが安定しているピアノや電子鍵盤は、同じ音を繰り返し提示しやすいため、音名との結びつきを学ぶ際によく用いられます。ただし、ピアノの音で判断できることと、ほかの楽器の音でも判断できることは同じではありません。習得の状況に応じて、音域や音色を変えて確認していきます。
また、絶対音感の練習だけを進めるのではなく、歌うこと、リズムを打つこと、楽譜を読むこと、音と音の関係を聴き取ることも並行して育てていきます。音名がわかることと、音楽として聴けることは別だからです。
家庭での練習は、教室で行っている手順をそのまま短時間続けることが基本です。
長く続ければ早く身につく、というものではありません。むしろ、疲れた状態での反復は、音を聴くこと自体を嫌いにさせてしまうことがあります。短くても毎日続けられる形を保つほうが、結果として先へ進みます。
幼児期のお子さまを対象とした当教室の絶対音感クラスでは、年齢や習得の状況に応じて段階的にレッスンを行い、ご家庭での練習の進め方もあわせてお伝えしています。

成人後でも、特定の音を記憶し、基準となる音なしに音名を判断する成績が訓練によって向上したという研究があります。一方で、すべての音や音色へ自動的に広がるとは限らず、幼児期に形成された絶対音感と同じ性質の能力といえるかについては、研究が続いています。
そのため大人の方が音感に取り組む場合は、絶対音感の獲得そのものを目標に据えるより、次の力を伸ばすほうが実際の演奏や歌に結びつきます。
このうち聴音は、教材の音源を使って一人でも進められます。旋律を一小節ずつ書き取って答え合わせをする、という単純な繰り返しですが、音の高さと長さの両方を同時に扱うため、演奏にそのまま返ってきます。基準の音をひとつ決めて歌い出す習慣をつけると、書き取りの手がかりになります。
絶対音感は、音楽を学ぶうえで役立つ場面のある能力です。ただし、優れた演奏や作曲のために欠かせない条件ではありません。曲の調がどう変わったか、和音がどのように進んでいるか、旋律の音と音がどのような間隔で並んでいるか。こうしたことを捉えるには、音の関係を聴き取る力が必要で、これは絶対音感とは別の力です。
また、音名が自動的に浮かぶことが、場面によっては負荷になるという報告もあります。絶対音感を持つことの利点と留意点については、絶対音感のメリット・デメリットで詳しく扱っています。
大切なのは、絶対音感があるかないかではなく、その人が音をどう聴き、それを音楽としてどう表しているかです。レッスンでも、音名を言い当てられるかどうかより、音の変化に気づいて演奏を調整できているかを見ています。
幼児期に始めた人で多く見られるという報告があり、6〜7歳頃までが一つの目安として挙げられます。ただし年齢だけで決まるものではなく、その時期に始めれば身につくと決まっているわけでもありません。ご検討の際は、お子さまが音を聴くことを楽しめているかを目安にしてください。
訓練によって音名判断の成績が向上したという研究はありますが、幼児期に形成されたものと同じ性質の能力といえるかは、まだ明らかになっていません。大人の方の場合は、音高の記憶、聴音、相対音感、ソルフェージュを伸ばすほうが、演奏や歌に直接結びつきます。
できます。ただし、音の高さが安定していて同じ音を繰り返し出せる楽器のほうが、音名との結びつきを学びやすくなります。ピアノや電子鍵盤がよく用いられるのはそのためです。ある楽器の音で判断できるようになったら、別の音色でも確かめておくとよいでしょう。
そのようなことはありません。絶対音感は音楽を学ぶうえで欠かせない条件ではなく、音と音の関係を聴き取る力、リズム、読譜、音色やフレーズを聴く力など、音楽を支える要素はほかにも数多くあります。これらは年齢を問わず伸ばしていくことができます。詳しくは絶対音感のメリット・デメリットをご覧ください。
絶対音感のトレーニングは、限られた音と音名を結びつけ、正誤をその場で確かめ、扱う音を少しずつ増やしていくという、地道な往復の繰り返しです。進み方には個人差があるため、「身についたかどうか」ではなく、正確さ・範囲・音色の違い・反応の速さという四つの観点で、今どこにいるのかを確かめながら進めます。
大人の方は、絶対音感そのものより、音高の記憶や聴音、相対音感、ソルフェージュに取り組むほうが演奏に返ってきます。そして子どもも大人も、最後に問われるのは音名を言い当てる速さではなく、音の変化に気づき、それを音楽として表せるかどうかです。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」