パイプオルガンの歴史について

パルプオルガンの写真
パルプオルガンの写真

パイプオルガンの原型となった水オルガンの誕生

空気に圧力を与え、選択したパイプに送ることで音を奏でる楽器がパイプオルガンです。
鍵盤に対応するだけのパイプを持ち、それぞれで異なる音域を持っています。
高低も決められており、一定の空気を送り込む構造から微妙な音の違いが出せない楽器です。
その代わりに安定して音が持続できます。
強弱をつけるためにはまた別の構造が存在し、複雑な音色も作り出せます。

その起源はとても古いことがわかっています。
紀元前数世紀の段階で原形が作られていたことが認められている、非常に古い歴史を持つ楽器です。
パイプオルガンとしても、ギリシア時代に作られた水オルガンが原型と考えられています。
このパイプオルガンは、楽器として作られたわけではなく、空気を送りだしたときに一定の圧力がかかるかどうかを調べるために音が出たともいわれています。

この水オルガンの原理は、水の中に空気を閉じ込めた状態を想像すれば難しくありません。
水をためた容器の中で、コップをひっくり返した状態を考えてみます。
鎮めてみると反発するように浮力が働きますが、底に穴が開いていればそこから空気が外に流れ出してくるでしょう。
この空気の流れを利用して笛をつけてあげれば、当然音が出ます。
水には一定の圧力がかかることから、空気の出てくる量も安定します。
音の高さも一定に長く出し続けられることは、パイプオルガンの原理につながるポイントです。
何らかの方法で空気を入れ続けてあげれば、ずっと安定した音が出続けますが、実際には空気の量も影響するため、音に動きが出てしまい安定しないのが水オルガンの欠点です。

ふいごを使って音を奏でていくパイプオルガン

紀元前1世紀ごろには、ふいごを使ったオルガンが発明されていきます。
音を途切れさせないためにふいごを使っているのが特徴で、複数設置して音が途切れるのを防いでいきますが、原理としては水オルガンと変わりません。
ふいごにはおもりがつけられており、一定の間隔で必要な空気を送りだしていくため、安定した空気量を確保できます。
現在のパイプオルガンにつけられているふいごも必ず複数あり、どちらも空気が送られていない状態を作らないようにしており、常に供給するための仕組みです。

以前はふいごを動かす専門の職人がついていました。
演奏しているときには、必ず供給できるように作業してくれたことで音が出ていました。
現在はモーターを使った送風機が空気を送りだしており、絶え間なくふいごを膨らませておくことが可能ですが、どうしても送風機から音が出てしまうため、別室に設置して隔離するのが一般的です。
その周りにも消音のための装置を作り上げ、防音処置を施します。

工業的に作り上げられたものもありますが、歴史の中に出てくるような人力で作るパイプオルガンもまだまだあります。
電気の力でモーターを動かし作り出す送風機の風では、どうしても気流が乱れてしまい音に影響が出るのが問題とされています。
そこで、音を重視して人力を選択する場合があります。
水オルガンでも起きますが、内部の圧力の変化で一定の音が出なくなりますから、昔ながらの方法を使い、一定方向だけに空気を流すようにしてあげることで、音色の良さを実現しています。

9世紀から現代にかけて

9世紀に入り、ヨーロッパではこれまで作られなくなっていたオルガンの製造が再開していきます。
単なる楽器のひとつとして生産が再開されますが、13世紀ごろに教会で使われる楽器として確立していきます。
現在でも教会で見かけるような大きなサイズですが、こうした大型のもの以外にも小型のものも多く作られていきました。

15世紀に入るとルネサンスの時代となり、複雑な音色を求めストップにも工夫が凝らされていきます。
現在のオルガンと同じ構造を持つスライダー・チェストも発明されて、これまで以上に効果的な変化を生み出せるようになりました。

17世紀から18世紀にかけ、バロック時代が訪れますが、歴史的に見てもパイプオルガンの全盛期にあたります。
競いはじめるように、どんどん巨大なものが作られるようになった時代です。
パイプオルガン自体が認知されるようになった時代でもあり、さまざまなところで見かけるようになります。

19世紀から20世紀初頭になると、交響楽の設計を用いたパイプオルガンが生まれてきます。
オルガンソロ曲も作られるようになった時代です。

20世紀になり、ドイツでオルガン運動が巻き起こりました。
古き時代のオルガンを見直し、まねするように数多く作られますが、研究も不十分な中で行われていったことはのちに大きな問題となりました。
現在では、慎重に修復されるようになり、パイプオルガンが本来持っていた音を奏でることができるように作られています。
楽器としての歴史的な価値を尊重し、古き時代のオルガン建造技術が使われるようになったことで、今でも古き時代の音色を楽しめます。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」

音楽教育のススメ(幻冬舎)