歌っている途中で息が続かない、息継ぎが苦しくて声が不安定になる——こうした悩みの多くは、呼吸法に原因があります。呼吸が安定していないと息が長く続かず、高い音も出しづらくなります。ここでは息が続かない原因を整理したうえで、腹式呼吸・息継ぎ・リップロールなど、今日から取り組める練習方法を順に解説します。
歌の途中で息が足りなくなる背景には、いくつかの原因があります。最も多いのは呼吸が浅く、一度に取り込める空気の量が少ないことです。息が安定しないと、フレーズの後半で声が細くなったり、音程が定まりにくくなったりします。
また、肩や胸、首まわりに力が入っていると、発声に関わる筋肉が硬くなり、息をスムーズに使えません。息継ぎのたびに大きく吸い込もうとして、かえって身体が緊張してしまう方も少なくありません。
息が続かないことを肺活量の問題だと考える方もいますが、実際には息の「量」よりも、息を効率よく使えているか、必要なときに素早く吸えているかという「使い方」の影響が大きいとされています。まずは呼吸の仕組みを整えることが、安定した歌声の土台になります。
呼吸法には、大きく分けて胸式呼吸と腹式呼吸があります。胸式呼吸は胸を主に使う呼吸で、肩や胸に力が入りやすく、長いフレーズでは息が浅くなりがちです。歌うときは、腹式呼吸を土台にすると息を安定して使いやすくなります。
腹式呼吸では、横隔膜の動きに合わせてお腹や背中まわりが自然に広がる感覚を使います。大切なのは、たくさん吸い込むことよりも、吸った息を急に吐き出さず、安定して使えるようにすることです。喉や肩に余分な力が入りにくくなるため、長いフレーズを落ち着いて歌いやすくなります。
腹式呼吸のやり方
お腹を無理に押し出したり、肩を大きく上下させたりする必要はありません。息が自然に入り、吐く息が細く長く続く感覚を大切にしましょう。
息が続かないと感じる方は、息を吐き切る前に苦しくなって、あわてて吸い込んでいることがよくあります。息継ぎを楽にするコツは、吸う量ではなく「吸い方」にあります。
息継ぎの場所を歌詞や楽譜にあらかじめ書き込んでおくと、余裕を持って歌えるようになります。息は「たくさん吸う」より「使い切る前に、こまめに整える」意識を持つと、フレーズの後半まで安定しやすくなります。
息を吸った後は、すぐに喉を固めて声を出そうとせず、息の流れに声を乗せるように歌い始めます。ブレスと発声が自然につながると、フレーズの出だしが安定しやすくなります。
リップロール(リップトリル)は、唇を閉じたまま息を出して「ブルブル」と震わせる練習方法です。発声前のウォーミングアップとして広く取り入れられています。
リップロールのやり方
震えにくいときは、両手の指で左右の頬を軽く支えると振動しやすくなります。唇が乾いていると震えにくいため、適度に湿らせておくとよいでしょう。
リップロールは、最初から長く続かなくても問題ありません。短い時間から始め、息の量を一定に保つ感覚を少しずつつかんでいきましょう。息を一定に保つ練習は、腹式呼吸で息を安定させる感覚をつかむことにもつながり、地声と裏声をなめらかにつなぐ助けにもなります。
息を使えるようになっても、喉だけに頼って歌っていると、声がすぐに疲れて安定しません。「喉で歌ってしまう」と感じる場合は、喉だけで押し出すのではなく、息の流れに乗せて、口の中や鼻の奥に響きを感じながら声を出す意識を持ちます。
無理のない響きを使えるようになると、声が安定しやすくなり、喉への負担も軽くなることが期待できます。歌の基礎として、まずは無理のない音域で、息を流しながらまっすぐ声を出す感覚をつかむことが、安定した歌声の土台になります。
練習中に喉の痛みや強い疲れを感じるときは、無理に続けず休むことが大切です。高い音や大きな声を出そうとして力むより、まずは出しやすい音域で、息と声を安定させることを優先しましょう。
声量そのものを伸ばしたい方は、声量を安定させるための練習も参考になります。音程が気になる方は、音程を安定させる練習もあわせて確認してみるとよいでしょう。
呼吸法や発声は、自分一人では正しくできているか判断しづらい分野です。自分の声は身体の中で響いた状態で聞こえるため、録音してもどこを直せばよいかわかりにくいことがあります。
特に初心者のうちは、気づかないうちに肩や喉に余分な力を入れる癖がつきやすく、独学ではその癖が固定してしまうこともあります。経験豊富な指導者に呼吸や発声の使い方を見てもらうことで、改善の道筋がはっきりします。
声楽・ボイストレーニングのレッスンを専門的に受けられる環境であれば、呼吸・発声・音程・表現までを体系的に磨いていくことができます。
呼吸や発声を整えることは、ただ長く歌えるようにするためだけではありません。自分の声をよく聴き、身体の使い方を理解し、音楽の表情をより自然に伝えるための土台にもなります。
必ずしも肺活量だけが原因ではありません。息の量よりも、腹式呼吸で息を効率よく使えているか、息継ぎのタイミングが適切かといった「使い方」の影響が大きいとされています。
吸う量を増やそうとして肩や胸に力が入ると、かえって息を使いにくくなることがあります。大切なのは、たくさん吸うことよりも、必要な分を素早く吸い、吐く息を安定して使うことです。
一般的には、背筋を伸ばして立った姿勢のほうが横隔膜が動きやすく、息を使いやすいとされています。座って歌う場合も、背もたれに寄りかからず上体を起こすと呼吸がしやすくなります。
唇や頬に力が入りすぎていることが多いようです。指で頬を軽く支える、息の量を一定に保つ、唇を湿らせるといった工夫で震えやすくなります。
個人差がありますが、呼吸法は毎日少しずつ続けることで身についていきます。短期間で大きく変わるものではなく、無理のない方法で続けることが大切です。
歌っていて息が続かない、息継ぎが苦しいという悩みの多くは、呼吸法を見直すことで改善が期待できます。腹式呼吸で息を安定させ、息継ぎのコツをつかみ、リップロールで発声を整える——この積み重ねが、安定した歌声につながります。独学で伸び悩んだときは、専門家の指導を受けることで、より確実に上達を目指せます。
まずは体験レッスンで、自分の声や呼吸のくせを見てもらうところから始めてみてはいかがでしょうか。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」