
相対音感(そうたいおんかん、英:Relative Pitch)とは、基準となる音を手がかりに、ほかの音の高さや音どうしの関係を聴き取る能力のことです。ある音を単独で聴いて名前を言い当てるのではなく、「二つの音がどれくらい離れているか」「どちらが高いか」を判断する力を指します。
相対音感は特別な才能ではありません。程度の差はあれ、多くの人が自然に備えている能力です。しかも絶対音感に比べると、年齢を問わず訓練で伸ばしやすいのが特徴です。この記事では、相対音感の基礎から絶対音感との違い、具体的な鍛え方までをわかりやすく解説します。
「絶対音感」という言葉はよく知られていますが、「相対音感」にはあまり馴染みがない方もいるかもしれません。
相対音感とは、先に鳴った音を基準として、次の音との関係を判断する力です。たとえば、単独で鳴った音の音名を当てるのは難しくても、続けて鳴らされた音と比べて「高い」「低い」「これは5度の間隔だ」といった判断ができる場合、その人には相対音感が備わっているといえます。
私たちが、はじめて聴いた曲でも音程をたどって歌えるのは、この相対音感がはたらいているためです。多くの人は、音の高低や旋律の動きを相対的に感じ取る力を、ある程度は自然に備えていると考えられます。ただし、音程を正確に聴き分けたり、楽譜に書き取ったりする力は、訓練によって少しずつ育てていくものです。日常生活では意識して使う場面が少ないため、自分にその力があると気づかないまま過ごしている人も少なくありません。
相対音感を理解するうえで欠かせないのが、絶対音感との違いです。両者はよく混同されますが、音の捉え方がまったく異なります。
絶対音感は、基準となる音がなくても、単独で鳴った音の高さを言い当てられる能力です。一方の相対音感は、基準音をもとに、そこからの音程や音の関係を判断します。おおまかな違いは次のとおりです。
| 観点 | 絶対音感 | 相対音感 |
|---|---|---|
| 音の捉え方 | 基準音なしで単独の音がわかる | 基準音をもとに音程・音の関係を判断する |
| 身につく時期 | 幼児期(およそ6〜7歳ごろまで)に習得しやすいとされる | 年齢を問わず訓練で習得しやすい |
| 備えている人 | 比較的少ない | 多くの人が自然に備えている |
| 主な活用場面 | 音名の即時把握 | 移調・アンサンブル・和声・読譜・耳コピなど幅広い |
「どちらが優れているか」と気になる方も多いですが、両者は優劣で比べるものではありません。絶対音感は音名を瞬時に把握できる点で目を引きますが、実際の演奏や歌唱で幅広く役立つのは相対音感です。移調やアンサンブル、和音の聴き取り、初見演奏など、音楽の多くの場面は相対音感に支えられています。プロの音楽家の中にも、相対音感を主軸に活動している人は少なくありません。
なお、絶対音感・相対音感のどちらも、生まれ持った素質だけで決まるわけではなく、幼少期からの音楽環境や訓練が大きく関わるとされています。
「相対音感は何人に一人が持っているの?」と疑問に思う方もいますが、実はそれほど珍しい能力ではありません。程度の差こそあれ、多くの人が自然に身につけています。
たとえば、同じ曲を高いキーで歌っても低いキーで歌っても「同じ曲」だと認識できるのは、相対音感がはたらいているからです。音名を意識していなくても、音と音の関係を感じ取っている証拠といえます。この点で、比較的珍しい絶対音感とは大きく異なります。
また、相対音感には「何歳までに始めなければならない」という制限はありません。絶対音感が主に幼児期の訓練によって育つのに対し、相対音感は子どもから大人まで、年齢を問わず伸ばしやすい能力です。「もう遅いのでは」と感じる必要はありません。
相対音感が育つと、音楽の楽しみ方が大きく広がります。音の高さだけでなく、和音や旋律の進行、複数の音の関係を瞬時に把握できるようになるためです。
具体的には、次のようなことができるようになっていきます。
楽譜が手元になくても演奏や歌唱ができるようになるのは、大きな自信につながります。とりわけ、ほかのパートに自分の音を正確に合わせて重ねられる力は、合唱や合奏でそのまま生きてきます。
相対音感は、子どもから大人まで、多くの場合、訓練によって伸ばしていくことができます。中でも効果的なのが、ソルフェージュと呼ばれる基礎訓練です。
ソルフェージュには、楽譜を見て歌う「視唱」や、聴いた音を楽譜に書き取る「聴音」などがあります。音楽大学や専門学校の入試で聴音試験が課されることが多いのも、相対音感を前提としているためです。基準となる音を示され、それをもとにメロディーを書き取る——まさに相対音感を使う課題です。
日常で取り入れやすい練習には、次のようなものがあります。
練習は、最初から長い旋律を書き取ろうとするのではなく、一音の高低、二つの音の間隔、短い旋律、簡単な和音という順に進めると無理がありません。日本の学校教育では、曲の調に応じて「ド」の位置が変わる移動ド唱法によって、相対的な音の高さの感覚を育てています。地道な訓練を続けることで、聴き取ったメロディーを楽譜に書き起こす力も自然に育っていきます。
相対音感をより実践的に鍛えたい方には、ピアノの学習がおすすめです。ピアノは平均律で正確に調律されており、鍵盤の上で音の高低を目で見ながら確認できます。自分で音程を作る必要がないため、演奏を通じて自然と音の関係を学べます。
多くの音楽大学が、専攻を問わず副科ピアノを必修としているのも、相対音感や和声感覚、音楽の基礎を総合的に育むうえでピアノが適しているからです。特に、すべての調でのスケール(音階)とアルペジオ(分散和音)を練習すると、調性と音程の感覚を効率よく養えます。
多くの人は、音の高低や旋律の動きを相対的に感じ取る力を、ある程度は備えていると考えられます。ただし、音程を正確に聴き分けたり、楽譜に書き取ったりする力は、訓練によって育てていくものです。
はい。相対音感は絶対音感に比べ、年齢を問わず訓練で伸ばしやすい能力です。視唱や聴音、ピアノを使った練習を続けることで、音の関係を捉える力が育っていきます。
どちらが上ということはありません。絶対音感は単独の音名を捉える力、相対音感は音と音の関係を捉える力です。演奏や合唱、移調、和声の理解では、相対音感が大きく役立ちます。
曲のキーが変わっても同じ曲だとわかる、旋律の上がり下がりを感じ取れる、合唱や合奏でほかの音に合わせやすい、といった特徴があります。
視唱、聴音、移動ド唱法、ピアノを使った音程の確認などが有効です。最初は短い音型から始め、少しずつ旋律や和音へ広げていくとよいでしょう。
相対音感は特別な才能ではなく、多くの人に自然に備わっている能力です。そして絶対音感に比べると、年齢を問わず訓練で伸ばしやすいのが特徴です。
「耳で聴いた音を正確に理解したい」「楽譜をもっとスムーズに読めるようになりたい」と感じたら、相対音感のトレーニングを始めてみてはいかがでしょうか。相対音感を体系的に伸ばしたい方は、ソルフェージュで視唱・聴音を学ぶこと、鍵盤を使いながら音の関係を理解したい方は、ピアノを学ぶことが有効です。基準音から音の関係を捉える練習を重ねれば、音楽の世界はいっそう豊かに広がっていきます。小林音楽教室では、目的や年齢に合わせて、音を聴く力・読む力・表現する力を基礎から育てています。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」