「チェロを始めてみたいけれど、難しそうで続けられるか不安」——そう感じる方は少なくありません。たしかにチェロは、最初のうちは思うように音が出ず、つまずきやすい楽器です。けれども、どこでつまずきやすいかをあらかじめ知り、続け方を工夫すれば、着実に上達していけます。
この記事では、チェロが難しいと感じる理由と、初心者がつまずきやすいポイントの乗り越え方、上達が早い人に共通する習慣、そして挫折せずに続けるコツを整理してお伝えします。具体的な練習方法はチェロが上達する練習方法で、構え方や運弓・運指の基本はチェロの奏法と弾き方で詳しく解説しています。
チェロが難しいといわれるのには、この楽器ならではの理由があります。つまずきの正体を知っておくと、必要以上に落ち込まずにすみます。
最も大きいのが、音程の取りにくさです。チェロにはギターのようなフレット(指を置く位置の目印)がなく、指を置く場所はすべて自分の耳と感覚で覚えていきます。ほんの数ミリずれるだけで音程が変わってしまうため、はじめは戸惑いやすいところです。
次に、弓の扱いです。弓で弦をこするという動作は日常生活にはほとんどなく、弓を弦と平行にまっすぐ動かすだけでも意外と難しいものです。弓の速さや圧のかけ方で音が大きく変わり、力を入れすぎればかすれ、弱すぎれば音が痩せてしまいます。
さらに、楽譜も一因です。チェロはヘ音記号で書かれることが多く、曲が難しくなるとハ音記号やト音記号も登場します。複数の音部記号に慣れるまでには、少し時間がかかります。こうした難しさは、いずれも「時間をかけて体に馴染ませていくもの」であり、最初からできなくて当然のことばかりです。
つまずきには、それぞれ向き合い方があります。ここでは代表的なポイントと、その第一歩となる工夫を紹介します。より具体的な練習の進め方は、チェロが上達する練習方法もあわせてご覧ください。
| つまずきポイント | 向き合い方の一例 |
|---|---|
| 音程が定まらない | はじめは指板に位置の目印(ポジションシール)を貼り、チューナーで確認しながら耳を育てる。慣れたら少しずつ目印を外していく |
| 左手の形が崩れる | 指がくっつきやすい中指・薬指を意識し、手の形を保つ。鏡や動画で確認する |
| 弓がまっすぐ動かない | 鏡の前で弓と弦が平行かを見ながら、開放弦でゆっくり運弓する |
| 音がかすれる・ざらつく | 弓の速さを一定にし、圧をかけすぎない。小さめの音量で安定を優先する |
| 楽譜が読めない | まずヘ音記号に慣れることから。アプリや簡単な教材でゲーム感覚で練習する |
音程に悩んだときは、一度チェロを置いて、その箇所を声に出して歌ってみるのも有効だといわれます。音程が取れない部分は、頭の中で音のイメージができていない部分でもあるからです。イメージを作り直してから弾くと、指の位置も定まりやすくなります。
上達の早さは、生まれ持った才能だけで決まるものではありません。むしろ、日々の向き合い方や習慣による部分が大きいといえます。上達が早い人には、次のような共通点が見られます。
ひとつは、短時間でも毎日楽器に触れることです。チェロは指の感覚が鈍りやすく、間が空くと戻すのに時間がかかります。1日15分でも続けるほうが、週に一度まとめて練習するより身につきやすいといわれます。
もうひとつは、基礎を丁寧に扱うことです。音階(スケール)やアルペジオの練習は単調に感じられますが、1音ずつ頭の中で歌いながら弾くことで、音程の感覚が養われていきます。加えて、自分の演奏を録音・録画して客観的に聴き返す習慣も、上達を早める助けになります。焦らず、少しずつ積み重ねる姿勢が、結果的にいちばんの近道になります。
チェロは、楽器を扱えるようになるまでに半年から年単位の時間がかかることも珍しくありません。だからこそ「長く付き合っていく」という前提を持てると、途中で気持ちが折れにくくなります。裏を返せば、飽きずに長く楽しめる奥深い楽器だということです。
続けるうえで支えになるのが、小さな目標を積み重ねることです。「この音階を弾けるようにする」「この短い曲を通してみる」といった達成しやすい目標を置くと、進歩を実感しやすくなります。発表会やアンサンブルなど、演奏を披露する機会を目標にするのも、モチベーションの維持に役立ちます。
また、独りで抱え込まないことも大切です。仲間と練習の悩みを共有したり、講師にフィードバックをもらったりすることで、自分の進歩を客観的に把握でき、前向きな気持ちを保ちやすくなります。つまずきは誰もが通る道であり、乗り越えたときの喜びこそが、チェロを続ける原動力になります。
チェロのつまずきの多くは、姿勢・弓の使い方・音程といった基礎に関わるものです。これらを自己流で続けると、気づかないうちに癖がつき、あとから直すのに苦労することがあります。自分では自分の欠点になかなか気づけないものですが、講師はなぜ思うように弾けないのかを的確に見抜き、改善の道筋を示してくれます。
小林洋子ほか『音楽教育のススメ 改訂版』(幻冬舎、2025年)でも、音をよく聴き、自ら感じて表現しようとする姿勢を育てることの大切さが語られています。チェロは、目立つ旋律だけでなく、低音の響きで音楽全体を支える楽器です。音程や弓の扱いに時間がかかるからこそ、一つひとつの音に耳を澄ませる経験が、深い音楽性につながっていきます。専門の講師とともに基礎から丁寧に積み上げていくことで、つまずきを乗り越え、その響きを自分のものにしていく楽しさを味わえます。楽器選びや始め方についてはチェロを始めるにはもご覧ください。まずはチェロのレッスンの体験で、いまのお悩みを相談してみてください。
大人からチェロを始めて楽しんでいる方は多くいます。上達は年齢よりも、続け方や向き合い方によるところが大きいものです。短時間でも継続し、基礎を丁寧に扱うことで、着実に上達していけます。
独学で楽しむこともできますが、姿勢や弓の使い方、音程には基礎があり、自己流では気づきにくい癖がつくことがあります。早い段階で講師に基礎を見てもらうと、遠回りを避けやすくなります。
個人差はありますが、開放弦を多く使う簡単な曲であれば、数か月で挑戦できることもあります。最初は音程の正確さより、最後まで弾き通す楽しさを大切にするとよいでしょう。
達成しやすい小さな目標を置き、進歩を実感できるようにするのがおすすめです。仲間や講師に悩みを話したり、発表の機会を目標にしたりすることも、続ける力になります。つまずきは誰もが通る道だと知っておくだけでも、気持ちが楽になります。
まとまった時間を毎日確保するのが難しくても、短い時間の積み重ねが効果的です。1日15分でも楽器に触れる習慣があると、指の感覚を保ちやすく、上達につながります。
チェロが難しいと感じるのは、フレットのない音程や弓の扱いなど、この楽器ならではの理由があるからです。どれも最初からできなくて当然のことで、つまずきは上達の過程の一部といえます。
位置の目印やチューナーで音程の感覚を育て、鏡や録音で自分を客観視し、短時間でも毎日続ける——こうした積み重ねが、着実な上達につながります。小さな目標や発表の機会を励みにしながら、独りで抱え込まず、必要なときは講師の力を借りてみてください。つまずきを乗り越えるたびに、チェロの深い響きはより豊かに感じられるようになります。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」