クラシックギターとは、一般にナイロン系の弦を張り、右手の指を使って演奏する撥弦楽器です。
幅の広い指板と、伝統的には扇状力木を用いた薄い表板を持ち、指先や爪の使い方によって音色を細かく変えられます。豊富な独奏作品があるほか、二重奏や室内楽、歌との共演にも用いられます。
この記事では、クラシックギターの特徴と音色、一般に「アコギ」と呼ばれるスチール弦アコースティックギターとの違い、始める際に用意したいものを解説します。
ギターは弦楽器です
ギターは弦楽器に分類されます。より細かくは、弦を弾いて(はじいて)音を出す撥弦楽器(はつげんがっき)です。
弦の発音方法に着目すると、次のように整理できます。
| 発音の仕方 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 弦をはじく | 指や道具で弦をはじく | ギター、ハープ、リュート |
| 弦をこする | 弓などで弦をこする | ヴァイオリン、チェロ |
| 弦を打つ | ハンマーなどで弦を打つ | ピアノなど |
これは楽器分類の体系そのものではなく、発音方法に着目した簡略な整理です。ピアノは通常「鍵盤楽器」として扱われますが、発音の仕組みとしては、鍵盤の操作によってハンマーが弦を打ちます。
クラシックギターとは
ギターには、クラシックギター、スチール弦アコースティックギター、エレクトリックギターなどがあります。
クラシックギターは、ナイロン系の弦を張り、右手の指を使って演奏するギターです。主にクラシック音楽を演奏するために発展してきました。
呼び方
現在の形になったのは、19世紀です。スペインの製作家アントニオ・デ・トーレス(1817–1892)をはじめとする人々の仕事によって、いまの姿が定まりました。楽器としての歴史は、クラシックギターの歴史で詳しく扱っています。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 弦 | 一般的なセットでは、高音側の第1〜3弦にナイロンなどの単線、低音側の第4〜6弦に合成繊維の芯へ金属線を巻いた巻線弦を使います。素材や構造は製品によって異なります |
| 演奏方法 | 右手の指を中心に弾き、指先や爪の当たり方で音色を変えます |
| 指板 | スチール弦ギターより指板の幅と弦の間隔が広いモデルが多く、1本ずつの弦を個別に扱いやすい設計です |
| 表板の構造 | 伝統的なスペイン式では、扇状力木(せんじょうりきぼく)が代表的です |
| ブリッジ | 弦を結んで留めるタイブロック式が代表的です |
| 演奏形態 | 独奏、重奏、室内楽、伴奏などに用いられます |
弦の張力
ナイロン系の弦は、一般にスチール弦より張力が低くなります。ただし、弾き心地はスチール弦とは異なるという程度で、押さえやすさは弦高、弦の種類、押さえ方によっても変わります。
指板の幅
弦の間隔が広いため、1本ずつの弦を独立して扱いやすくなります。一方で、複数の弦をまとめて押さえる場面では、手の大きさによって押さえにくく感じることもあります。
一人で複数の声部を扱える
右手の指を使い分けることで、旋律・伴奏・低音を一人で同時に鳴らせます。これがクラシックギターの大きな特徴です。
クラシックギターの音色は、弦の素材と張力、表板と力木の設計、弾く位置、指先や爪の当たり方など、複数の条件によって生まれます。
ナイロン系の弦は、一般にスチール弦とは異なる、丸みのある音色を持ちます。ただし、クラシックギターの音は一種類ではありません。弾く位置やタッチによって、やわらかな音から、明瞭で輪郭のある音まで、幅広く変化します。
音色は、演奏者が「選ぶ」ものです
| 弾く位置 | 一般的な傾向 |
|---|---|
| サウンドホール付近 | バランスの取れた音 |
| ブリッジ寄り | 明るく、輪郭が明瞭 |
| 指板寄り(ネック側) | 柔らかく、丸みのある音 |
いずれも傾向であり、楽器、弦、爪の状態、タッチによって変化します。
右手を数センチ動かすだけで、音は変わります。この「音色を選べる」ことが、クラシックギターの表現の核心です。
音色のつくり方については、クラシックギター中級者の練習方法で詳しく扱っています。
ここでいう「アコギ」は、一般にスチール弦アコースティックギターを指します。クラシックギターも電気増幅を必要としない楽器であるため、本来は「アコースティックギター」の一種ですが、慣用的にこう呼び分けられています。
| クラシックギター | スチール弦アコースティックギター | エレクトリックギター | |
|---|---|---|---|
| 代表的な弦 | ナイロン系 | スチール | スチール |
| 一般的な奏法 | 指による演奏が中心 | 指・ピック | 指・ピック |
| 指板 | 比較的広く平ら | 比較的狭い | モデルにより多様 |
| 代表的な力木 | 扇状力木など | Xブレイシングなど | — |
| ブリッジ | タイブロック式が代表的 | ブリッジピン式が代表的 | — |
| 音の増幅 | 楽器本体の響き | 楽器本体の響き | ピックアップとアンプが基本 |
| 代表的な用途の例 | 独奏、室内楽、伴奏など | 弾き語り、独奏、バンドなど | バンド、独奏など |
これは伝統的な代表例です。現代の楽器には、製作家やモデルによって異なる力木構造もあります。また、クラシックギターでポピュラー作品を演奏することも、スチール弦ギターでクラシック系の作品を演奏することもあります。
扇状力木とXブレイシング
扇状力木は、伝統的なガット弦・ナイロン弦系のギターで発展してきた代表的な表板構造です。一方、Xブレイシングは、多くのスチール弦フラットトップギターで用いられてきました。弦の張力や目指す音響特性が異なるため、内部構造も異なります。
★ クラシックギターにスチール弦を張ってはいけません
ナイロン弦用のクラシックギターにスチール弦を張ると、ネックや表板に過大な負担がかかり、破損につながるおそれがあります。弦の張力がまったく異なるためです。
どちらを選ぶか
どのギターが自分に合うかは、演奏したい音楽と、弾き方の好みによります。楽器選びについては、クラシックギターの選び方をご覧ください。
| 区分 | 用意するもの |
|---|---|
| 基本的に必要 | クラシックギター、チューナー、足台またはギター支持具 |
| あると便利 | 譜面台、替えの弦、クロス(拭き取り用) |
| 奏法に応じて | 爪やすり |
爪について
爪を使う場合は、弦に引っ掛からないよう断面を滑らかに整えます。整えるのは、弦を弾く右手の爪です。
左手の爪は、指先で弦を押さえる妨げにならない長さに保ちます。深く切りすぎないよう注意してください。
なお、爪を使わず、指先だけで弾く方法もあります。仕事や生活の都合で爪を伸ばせない場合も、演奏はできます。
チューニングと保管
ナイロン系の弦は、張り替えた直後や温度変化によって音程が動きやすいため、演奏前に調弦します。クリップ式のチューナーやアプリを使うと確実です。
また、木製の楽器本体は、極端な乾燥や高温多湿を避けて保管します。
構え方やチューニングの具体的な手順は、クラシックギター初心者の練習方法で解説しています。
クラシックギターには、ルネサンス期のビウエラ・リュート作品の編曲、ソルやジュリアーニの古典派の作品、タレガやバリオスの作品、20世紀以降のスペイン・中南米・現代の作品など、幅広いレパートリーがあります。
「愛のロマンス(禁じられた遊び)」のように、映画音楽を通じて広く知られるようになった作品もあります。
独奏だけでなく、二重奏、室内楽、歌との共演にも用いられます。
レパートリーの広げ方については、クラシックギターの練習方法【上級者編】で扱っています。
弦楽器です。より細かくは、弦を弾いて(はじいて)音を出す撥弦楽器に分類されます。弓で擦るヴァイオリンやチェロは擦弦楽器、ハンマーで弦を打つピアノは打弦の仕組みを持つ鍵盤楽器です。
ここでいうアコースティックギターは、一般に「アコギ」と呼ばれるスチール弦のギターを指します。最も大きな違いは弦です。クラシックギターはナイロン系の弦、スチール弦ギターはスチール弦を使います。そのため内部の構造も異なり、クラシックギターは扇状力木、スチール弦フラットトップギターはXブレイシングが代表的です。指板の幅、ブリッジの形も異なります。
張ってはいけません。ナイロン弦を前提に設計されているため、スチール弦の強い張力によって、ネックや表板が破損するおそれがあります。
弦の素材と張力、表板と力木の設計、弾く位置、指先や爪の当たり方など、複数の条件によって生まれます。音色は一種類ではなく、弾く位置やタッチによって大きく変わります。
「ガットギター」は、クラシックギターやナイロン弦ギターを指す呼称として使われることがあります。かつて弦にガット(羊の腸)を用いていたことに由来しますが、現在は合成素材の弦が一般的です。「古典ギター」と表現されることもありますが、一般には「クラシックギター」と呼ばれます。
クラシックギターとは、一般にナイロン系の弦を張り、右手の指を使って演奏する撥弦楽器です。
幅の広い指板と、伝統的には扇状力木を用いた薄い表板を持ち、一人で旋律・伴奏・低音を同時に扱えます。スチール弦のギターとは、弦も、内部の構造も異なります。
そして、その音色は一つではありません。弾く位置、指の角度、指先や爪の当たり方によって、大きく変わります。音色を選べること——それが、この楽器の魅力のひとつです。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」