クラシックギター中級者の練習方法|セーハ・スラー・音色の磨き方

初級の練習曲を一通り弾けるようになると、次に進む道筋が見えにくくなります。何を練習すればよいのかを、自分で判断しなければならない段階に入るからです。

中級で身につけたいのは、次の5つです。

  • セーハ(バレー)——人さし指で複数の弦をまとめて押さえる
  • スラー——左手の動作で音をつなぐ
  • スケールとアルペジオの発展——音域と運指を広げる
  • 音色と声部のバランス——どの音を聴かせるかを選ぶ
  • 練習メニューの設計——自分の課題に合わせて組み立てる

この記事では、この5つを順に解説します。あわせて、クラシックギターの代表的な奏法と表現技法を一覧で整理します。

基礎の確認はクラシックギター初心者の練習方法をご覧ください。

中級者とは——「弾ける」と「音楽になっている」の違い

クラシックギターに、中級者の明確な定義はありません。ただ、一つの目安があります。

初級の練習曲を、基本的な奏法を守りながら、ゆっくりでも最後まで弾き切れること。「なんとなく音は出ている」ではなく、「どの音も意図して出している」状態です。

中級とは、技法の数が増えるだけの段階ではありません。旋律・伴奏・低音のうち、どの声部を聴かせるかを選び、音色や強弱、音の長さを使って作品の流れをつくる段階です。

初級では、正しい音を正しい順序で出すことが目標でした。中級では、その先が問われます。同じ音符でも、どこを弾くか、どんな角度で弾くか、どのくらいの速さで指を動かすかによって、音の表情は変わります。中級とは、その選択肢を手に入れ、選べるようになっていく段階です。

クラシックギターの代表的な奏法・表現技法一覧

クラシックギターには多くの技法があります。種類ごとに整理します。ここに示すのは学び方の目安であり、「この技法は必ず中級」という固定の分類ではありません。多くの技法は初級から始まり、段階的に発展していきます。

分類主な項目学び方の目安
右手の基本奏法アポヤンド、アルアイレ初級から継続して磨きます
右手の音型アルペジオ初級で基本形、中級で複雑なパターンへ
左手の技法セーハ、上行・下行スラー、ポジション移動、ビブラート部分セーハから段階的に。スラーは基礎のあとに音量・速度・表現を発展させます
音階・両手の連携スケール、重音音階初級で基本、中級で音域・運指・ポジションを拡大します
音色・表現弾く位置、タッチ、声部のバランス、アーティキュレーション、消音中級以降、継続的に深めます
発展技法自然ハーモニクス、人工ハーモニクス、トレモロ、ラスゲアド自然ハーモニクスから人工ハーモニクスへ。トレモロは基本形を学び、長期的に完成度を高めます

ラスゲアドは、指を扇状に開きながら弦をはじく技法です。フラメンコに由来し、スペイン系の一部の作品で用いられます。

発展技法についてはクラシックギターの練習方法【上級者編】で扱います。

セーハ(バレー)——中級で最初にぶつかる壁

セーハは、人さし指で複数の弦をまとめて押さえる技法です。和音を扱う曲では避けて通れません。

なぜ難しいのか
指の腹には、関節のくぼみがあります。そこに弦が当たると、その弦だけ音が詰まります。押さえる力を強くすれば鳴りますが、力めば手は疲れ、その後の運指が動かなくなります。力で解決しようとすると行き詰まるのが、セーハの特徴です。

取り組み方

  • 親指と人さし指だけで強く挟み込まず、左腕と楽器の支えを利用しながら、必要な範囲に圧力をかけます
  • 人さし指をわずかに回転させ、弦が鳴りやすい接地面を探します。適した角度は手の形によって異なります
  • 親指の位置や人さし指の角度は、手の大きさや押さえる和音によって調整します
  • 押さえる位置はフレットのすぐ手前。フレットから遠いほど、必要な力が増えます
  • 最初は2〜3本の弦を押さえる部分セーハから始め、必要に応じて本数を増やします

安定して鳴らせるまでに時間がかかることがあります。手を十分にほぐしたあと、短時間ずつ取り組んでください。痛みやしびれを感じた場合は中止します。

スラー——左手の動作で音をつなぐ

スラーは、最初の音を右手で弾いたあと、続く音を左手の動作でつなぐ技法です。素早い装飾音や、速い走句で用いられます。

種類動作呼び方
上行スラー押さえている弦を、別の指で打つようにして高い音を出しますハンマリング・オンにおおむね対応します
下行スラー押さえていた指で弦をわずかに横方向へとらえながら離し、低い音を発音しますプリング・オフにおおむね対応します

タブ譜では上行を H、下行を P と表記する慣習がありますが、クラシックギターの楽譜では、スラー記号(音符をつなぐ曲線)で示されるのが一般的です。記号の形を覚えるより、「左手の動作で音をつなぐ指示」だと読み取れることが大切です。

練習のこつ

  • 上行スラーでは、指を大きく振り上げず、フレットに近い位置を短い動きで押さえます
  • 下行スラーでは、押さえていた指で弦をわずかに横方向へとらえながら離します
  • 前後の音とのバランスが崩れない、明瞭な発音を目標にします

楽譜上の記号については楽譜の読み方もあわせてご覧ください。

音域と運指を広げるスケール、複雑なアルペジオ

スケール(音階)
スケールは初級から扱う練習です。中級で発展するのは、次の要素です。

  • 1つのポジションに収まらない、2〜3オクターブの音域
  • ポジション移動——左手を指板上で移し、広い音域を扱う
  • 三度・六度・オクターブなどの重音音階
  • 右手の運指を変えて弾く(i・m だけでなく m・a なども)
  • 音色・強弱・アーティキュレーションをつける

基礎練習としては、まず音量・音色・長さをそろえ、均一に弾けることを確認します。その後、強弱やフレーズを加えていきます。メトロノームは、崩れずに弾ける最も遅い速度から始めます。

アルペジオ
初級では p・i・m・a の基本形を扱いました。中級では、順序を入れ替えたパターン、和音の移り変わりを伴うパターン、そしてセーハを含むアルペジオへ進みます。

右手のパターンを覚えることと、左手の和音を切り替えることは、分けて練習することをおすすめします。両方を同時に練習すると、どちらが原因で崩れているのか分からなくなります。

音色と声部のバランスをつくる

中級の中核です。同じ音符でも、音の質は変えられます。

音色とは何か
音色とは、同じ高さ・同じ大きさの音でも異なって聞こえる、音の質のことです。音の高さ(音程)でも、大きさ(音量)でもありません。

弾く位置を変える

弾く位置音の傾向
サウンドホール付近バランスのとれた、標準的な音
ブリッジ寄り明るく、輪郭が明瞭な音
指板寄り(ネック側)柔らかく、甘い音

いずれも傾向であり、楽器・弦・爪の状態・タッチによって変化します。右手を数センチ動かすだけで音は変わります。曲の場面に応じて弾く位置を選べるようになることが、中級の大きな一歩です。

声部のバランス
クラシックギターでは、一人で旋律・伴奏・低音を同時に扱うことがあります。すべての音を同じ強さで弾くと、旋律が埋もれてしまいます。

まず旋律だけを取り出して歌うように弾き、次に伴奏を小さく重ね、最後に低音の長さを整えると、声部の役割を確認しやすくなります。あわせて、不要になった弦の響きを止める消音も意識してください。低音弦の残響は、和声を濁らせる原因になります。

中級では、正しい音を並べるだけでなく、どの声部を聴かせるか、どこへ向かってフレーズをつくるかを考えることが重要になります。

爪の手入れ
クラシックギターでは、爪も楽器の一部といわれます。爪切りで大まかに整える場合も、最後はやすりで断面を滑らかにします。磨きが不十分だと、弦が爪に引っかかり、ざらついた音になります。

ただし、適した長さと形は指によって異なります。爪を使わず指先で弾く方法もあります。

中級者の練習メニューは、自分で組み立てる

初級では、教則本の順序に従って進めることができました。中級からは、自分の課題に合わせて練習を設計する必要があります。

設計の手順

  • できないことを特定する。曲を通して弾き、崩れる箇所を書き出します。「なんとなく苦手」ではなく、「第12小節のセーハで3弦が鳴らない」というところまで絞ります
  • 原因を切り分ける。右手か、左手か、両手の連携か。原因が違えば、練習方法も変わります
  • 基礎練習に組み込む。その課題を、毎日の基礎練習のメニューに入れます。曲の中で繰り返し弾くより、切り出したほうが確実です
  • 記録する。記録があると、停滞の原因や変化を振り返りやすくなります

1回40分のメニュー例

時間内容
5分チューニング、構え、脱力の確認
8分セーハまたはスラー
8分スケール・アルペジオ
10分曲中の難しい2〜4小節
5分旋律と伴奏のバランス
4分通して録音し、記録する

すべてを毎日行う必要はありません。そのときの課題に応じて配分を変えてください。

中級では、練習時間を増やすだけでなく、課題を切り分けて練習方法を選び直すことが必要になる場合があります。弾ける箇所を繰り返し弾いて、弾けない箇所は毎回そこで止まる。これでは、時間をかけても同じ場所に留まりやすくなります。

中級の壁をどう越えるか

中級は、上達を実感しにくくなる時期でもあります。初級のように「昨日弾けなかったものが今日弾ける」という変化が起きにくく、進んでいる実感が持ちにくくなります。

壁の正体は、多くの場合「自分では確認しにくい」ことです。

演奏を確認する際に見るのは、出ている音だけではありません。右手の角度と位置、左手首の状態、肩の力み、楽器の支え方。これらは演奏中の本人には確認しにくく、録画で見ても、判断の基準がなければ何が問題か分かりにくいものです。

セーハで音が詰まる、スラーの音量がそろわない、速く弾くと粒が崩れる。これらはいずれも、原因が複数あり得る症状です。自分で原因を切り分けられないまま練習を重ねると、適切でない動きが定着することがあります。

中級で生じやすい課題には、次のようなものがあります。

  • セーハで一部の弦が鳴りにくい。人さし指の接地面や角度、フレットとの距離、親指や腕の使い方、楽器の状態など、複数の要因が考えられます
  • テンポを上げると音の粒が乱れる。右手だけでなく、左手の準備、両手の同期、指の移動距離や余分な力みが関係している場合があります
  • 音は並ぶが、音楽の流れを感じにくい。旋律・伴奏・低音のバランスに加え、フレーズ、強弱、音色、音の長さを確認します

共通するのは、表面に現れた症状と原因が一致するとは限らないことです。中級では、どこで崩れたかだけでなく、なぜ崩れたかを切り分け、それに合う練習を選ぶことが重要になります。

独学で進めるか、レッスンを取り入れるかは、クラシックギターは独学できる?で整理しました。中級の課題は、独学の弱点が最も表れる領域です。節目で第三者に確認してもらうことを検討する価値があります。教室を探す際の基準はクラシックギター教室の選び方をご覧ください。

よくある質問

中級者の目安は何ですか?

明確な定義はありません。初級の練習曲を、基本的な奏法を守りながら、ゆっくりでも最後まで弾き切れることが一つの目安です。

セーハが鳴りません。どうすればよいですか?

力を強くする前に、指の角度を確認してください。人さし指をわずかに回転させ、弦が鳴りやすい接地面を探します。押さえる位置がフレットから遠いと、必要な力が増えます。2〜3本の弦を押さえる部分セーハから始め、痛みやしびれを感じたら中止してください。

ハンマリング・プリングとスラーは違うものですか?

ハンマリング・オンとプリング・オフは、クラシックギターでいう上行スラー・下行スラーに、おおむね対応する呼び方です。クラシックギターの楽譜では、スラー記号(曲線)で示されるのが一般的です。

音色を変えるには、何から始めればよいですか?

弾く位置を変えることから始めるのが分かりやすい方法です。同じフレーズを、サウンドホール付近、ブリッジ寄り、指板寄りで弾き比べてみてください。数センチの違いで音が変わることが分かります。

中級になると、練習時間はどのくらい必要ですか?

時間の長さだけでなく、設計が結果を左右します。できない箇所を特定し、切り出して反復する時間を確保できているかを見直してみてください。

まとめ

中級で身につけたいのは、セーハ、スラー、スケールとアルペジオの発展、音色と声部のバランス、そして練習メニューの設計です。

初級との違いは、「正しく弾く」から「どう弾くかを選ぶ」へ移ることです。どの声部を聴かせるか、どこへ向かってフレーズをつくるか。同じ音符でも、弾く位置と角度で音の表情は変わります。その選択肢を増やし、場面に応じて選べるようになる。中級とは、そのための時期です。

上達を実感しにくい時期でもあります。それでも、一音ずつ丁寧に確かめる時間の積み重ねが、やがて自分の音をつくります。

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