自分に合う楽器は性格で決まる?6分野の比較と作曲という選択肢

「明るい性格ならピアノ、几帳面ならヴァイオリン」——楽器選びで、そのような話を聞いたことがあるかもしれません。ただ、実際のレッスンの場では、同じ楽器をまったく違うタイプの方が長く続けておられます。

この記事では、性格の類型ではなく、どのような音に惹かれるか、どのように学びたいか、どのような環境なら続けられるかという三つの段階から、分野を選ぶ考え方を整理します。取り上げるのは、ピアノ・声楽・ヴァイオリン・チェロ・フルート・クラシックギターの6つの演奏分野と、演奏するだけでなく音楽をつくりたい方に向けた作曲です。

楽器は性格で決まるのか

結論から言えば、固定的な性格の類型で向き不向きが決まることはありません。「几帳面な人に向く」「目立つのが好きな人に向く」といった説明を見かけることがありますが、根拠のあるものではありません。性別や、明るい・控えめといった類型で決まるものでもありません。

一方で、自分がどのような時間を心地よいと感じるかは、選ぶときの手がかりになります。一人で静かに練習する時間が好きなのか、誰かと合わせて音を重ねるのが楽しいのか。細かな音色の変化を試すのが好きなのか、身体全体を使う表現に惹かれるのか。これは適性の話ではなく、好みの話です。

そして、最初の選択を固定しすぎる必要もありません。学ぶうちに関心が移ることはよくありますし、複数の分野を並行して学ぶ方もおられます。

自分に合う分野を考える3つの段階

第1段階:どの音・曲・表現に惹かれるか

最初の手がかりは、自分がどのような音を美しいと感じるかです。好きな曲や演奏家がいるなら、その音を出しているのが何かを確かめてみてください。自分の身体で歌いたいのか、楽器を通して音をつくりたいのか。あるいは演奏するより、音楽そのものを組み立てることに関心があるのか。ここが定まると、選択肢はかなり絞られます。

第2段階:どのような学び方を経験したいか

次に、学びの過程で何を扱いたいかを考えます。鍵盤のように音の高さが決まっている楽器を扱うのか、自分で音程をつくる楽器を扱うのか。単旋律を深く磨いていくのか、和音や複数の声部を同時に扱うのか。呼吸を使うのか、手指の細かな動きを使うのか。独奏に集中したいのか、伴奏や室内楽、合奏に加わりたいのか。

これらはどれが優れているという話ではなく、どのような時間を過ごしたいかという違いです。

第3段階:継続できる環境があるか

最後に、現実的な条件を確かめます。自宅で出せる音量はどのくらいか。楽器を置く場所があるか、持ち運ぶ必要があるか。調弦や組み立て、日常の手入れにどれくらい時間を割けるか。楽器を購入するのか、レンタルから始めるのか。通える範囲に学べる場があるか。

三つの段階のうち、最後で行き詰まることは少なくありません。惹かれた分野が住環境と合わない場合でも、消音の方法や練習場所を確保する手立てがあることもあるため、あきらめる前に相談してみてください。

6つの演奏分野を比較する

以下は分野ごとの特徴です。難易度の順位ではなく、扱うものの違いとしてご覧ください。

分野音のつくり方初期に学ぶ主な基礎楽しめる演奏形態
ピアノ鍵盤を押し、ハンマーが弦を打つ姿勢、読譜、左右の手の協調独奏、伴奏、室内楽、連弾
声楽呼気で声帯を振動させ、身体で響かせる呼吸、発声、自分の声を聴くこと独唱、重唱、合唱
ヴァイオリン弦に弓を当てて振動させる構え、弓の扱い、音程独奏、室内楽、オーケストラ
チェロ弦に弓を当てて振動させる姿勢、弓の扱い、音程独奏、室内楽、オーケストラ
フルート歌口に息を当てて空気を振動させる組み立て、息の向き、音の立ち上げ独奏、室内楽、吹奏楽やオーケストラ
クラシックギター指で弦を弾く姿勢、左右の手の使い方、調弦独奏、伴奏、重奏
分野身体との関わり練習環境準備と持ち運び
ピアノ両手と両足を使い分ける音量は大きめ。消音機能付きや電子ピアノという選択肢もある据え置き。調律が必要
声楽身体そのものが楽器になる声を出せる場所と時間が必要楽器の準備は不要
ヴァイオリン左右の手の役割が大きく異なる音量は中〜大比較的小型。弓や肩当てを含めて扱い、手入れが必要
チェロ上半身全体で楽器を支える音量は中〜大大きく、移動と保管の場所を要する
フルート呼吸と手指を同時に使う音量は中程度分解して収納できる。組み立てと手入れが必要
クラシックギター左右の手で押さえ、弾く音量は抑えめ。時間帯への配慮は必要持ち運びやすい。毎回の調弦が必要

ピアノ

鍵盤を押せば一定の高さの音が出るため、音を出すこと自体には入りやすい分野です。一方で、両手で異なる声部を扱い、ペダルも含めて音楽を組み立てていくため、読譜の負担は他の分野より大きくなります。独奏の作品が豊富にあり、伴奏や室内楽でも中心的な役割を担います。

楽器そのものの違いについては、ピアノの種類と特徴で解説しています。

声楽

楽器を購入したり持ち運んだりする必要はありませんが、身体そのものが楽器になります。呼吸、発声、言葉の扱い、音程を継続して整えていく分野です。練習には声を出せる場所と時間が必要で、音量への配慮も欠かせません。多くの場合は伴奏と合わせて演奏し、重唱や合唱の機会もあります。

ヴァイオリン

弦に弓を当てて音を出します。始めたばかりの時期は、構え方、弓の扱い、そして自分で音程をつくることを同時に覚えていきます。単旋律を扱うため音の並びは追いやすい一方、音程を自分で決める点が鍵盤楽器と大きく異なります。独奏、室内楽、オーケストラのいずれでも中心的に用いられます。

本体は比較的小型ですが、弓や肩当てを含めてケースで扱い、弦や弓の手入れも必要です。弦楽器どうしの違いは弦楽器4種類の違いをご覧ください。

チェロ

ヴァイオリンと同じく弦を弓で鳴らしますが、床に立てて構えるため姿勢のつくり方が異なります。音域が人の声に近く、低音から中音域の響きに惹かれて選ぶ方もおられます。独奏、室内楽、オーケストラのいずれでも用いられます。

楽器が大きいため、移動時の負担と保管場所の確保は、始める前に考えておきたい点です。

フルート

息を吹き込んで音を出す木管楽器です。最初に取り組むのは、息の向きと口の形を整えて音を立ち上げることで、ここに時間がかかる方もいます。分解してケースに収められるため持ち運びやすい一方、演奏のたびに組み立てと手入れが必要です。独奏、室内楽のほか、吹奏楽やオーケストラでも用いられます。

クラシックギター

指で弦を弾いて音を出します。和音と旋律を一人で同時に扱えるため、独奏で音楽が完結しやすい分野です。始めのうちは、姿勢、左右の手の使い方、そして毎回の調弦を覚えます。音量は他の分野より抑えめで、集合住宅でも比較的扱いやすい場合がありますが、夜間などの配慮は必要です。爪を使う奏法が一般的ですが、奏法や指導方針によって異なります。

演奏するだけでなく、音楽をつくる——作曲という選択

演奏そのものより、音楽を組み立てることに関心がある方には、作曲という選択肢があります。

学ぶ内容は演奏分野とは性質が異なり、和声法、対位法、楽曲分析などを通して、音がどのように組み合わさって音楽になるのかを扱います。実際には、鍵盤で響きを確かめたり、楽譜に書き起こしたり、記譜ソフトを使ったりしながら進めます。楽器の経験がなくても始められますが、音を確かめる手段があると理解が進みやすくなります

演奏と作曲は、どちらかを選ばなければならないものでもありません。楽器を学びながら作曲に取り組む方もおられます。

迷ったときに確かめたいこと

比較表を眺めても決めきれないことは、よくあります。そのときは、次のことを試してみてください。

  • 好きな曲を聴き直し、惹かれている音がどの分野のものかを確かめる
  • その分野の音を、録音ではなく生で聴いてみる
  • 体験レッスンで、実際に楽器に触れる、声を出してみる
  • 自宅で出せる音量と練習できる時間帯を伝えて、講師に相談する

とくに、実際に音を出してみることは、文章を読むより多くのことを教えてくれます。手に持ったときの重さ、息を入れたときの手応え、自分の声が響いたときの感覚——こうしたものは、比較表には書けません。

そして、最初の選択を決定的なものと考えなくて構いません。学ぶうちに関心が変わることも、別の分野を加えることもあります。

よくある質問

楽器に向き不向きはありますか?

固定的な性格の類型で決まる向き不向きはありません。ただし、どのような音に惹かれるか、どのような練習の時間を心地よいと感じるかは、選ぶときの手がかりになります。また、自宅で出せる音量や楽器を置く場所といった条件は、続けられるかどうかに実際に影響します。

大人から始められる分野はどれですか?

ここで挙げた6つの演奏分野と作曲は、いずれも大人から始めることができます。年齢によって入り口が閉ざされる分野はありません。読譜や音楽の理解については、大人のほうが早く進む場面もあります。

集合住宅でも練習できる分野はありますか?

音量が比較的抑えめなクラシックギターや、消音機能を備えたピアノ、電子ピアノなどが選択肢になります。ただし建物の構造や時間帯によって条件は変わるため、事前の確認をおすすめします。練習室を借りるという方法もあります。

途中で分野を変えてもよいですか?

構いません。学ぶうちに関心が移ることはよくあります。ある分野で身につけた読譜やリズムの感覚は、別の分野でも土台として働きます。複数の分野を並行して学ぶ方もおられます。

まとめ

楽器や分野の選び方に、性格による正解はありません。手がかりになるのは、どのような音に惹かれるか、どのような学び方を経験したいか、どのような環境なら続けられるかという三つです。

この記事で挙げた6つの演奏分野と作曲は、どれが優れているというものではなく、扱うものと、そこで過ごす時間が違うだけです。比較表で見当をつけたら、あとは実際に音を聴き、触れてみてください。文章では伝わらないことが、そこにあります。

体験レッスン申込はこちら

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」

音楽教育のススメ(幻冬舎)