この記事では、主に「歌うこと」を目的としてボイトレ教室を探す場合を扱います。話す声や仕事の場面での発声については、ビジネスの発声練習で詳しくご説明しています。
「ボイトレ教室」を探し始めると、案内されている内容が教室によってかなり違うことに気づきます。録音設備を前面に出すところもあれば、呼吸法と発声の基礎から積み上げると説明するところもあります。
「ボイストレーニング」という名称だけでは、その教室が実際にどのような歌唱様式を扱い、レッスンで何をするのかは分かりません。クラシック声楽を基盤とする指導もあれば、ポピュラー音楽を中心とする指導もあり、その両方を扱う教室もあります。
大切なのは、どちらが優れているかを決めることではなく、自分の目的と実際のレッスン内容が合っているかを確かめることです。この記事では、代表的な方向性の違いを整理したうえで、教室を見るときに確認できることをご説明します。声楽そのものについては声楽とはで扱っています。
歌うことを目的としたボイストレーニングには、いくつかの方向性があります。ここでは代表的な二つを取り上げますが、これは公的・学術的に定められた教室の分類ではありません。違いを理解するための整理としてご覧ください。
| 観点 | クラシック声楽を基盤とする指導 | ポピュラー音楽を中心とする指導 |
|---|---|---|
| 主な対象 | クラシック声楽、歌曲、オペラなど | ポップス、ジャズ、ミュージカルなど |
| 技術上の重点の例 | 呼吸、共鳴、発音、レガート、音域、楽譜の解釈など | 発声の基礎、ジャンルに応じた音色・発音・フレージング、マイクの使用など |
| レパートリー | 歌曲やオペラなどのクラシック作品 | 希望するジャンルや楽曲 |
| 確認したいこと | どのような声楽教育とレパートリーを扱うか | 希望するジャンルを講師が扱っているか |
| 共通する部分 | 呼吸、発声、音程、リズム、表現など、重なる学習内容もあります | |
この二つは対立するものではありません。境界は固定的ではなく、両方を扱う教室もあります。また、同じ看板を掲げていても、扱う内容は講師によって幅があります。まずは自分がどちらに近いかを見当づけるための整理として捉えてください。
教室を比べる前に、自分が何を学びたいのかを言葉にしておくと、確認すべきことが決まります。たとえば、声楽をきちんと学びたいのか、特定のジャンルを歌えるようになりたいのか、歌いたい曲が決まっているのか、受験や舞台といった目標があるのか。目的が定まらないまま探し始めると、比べる基準も定まりません。
なお、声がれや声の出しにくさなど、歌唱の技術だけではなく声の健康そのものが気になる場合は、ボイトレ教室だけで判断せず、耳鼻咽喉科でご相談ください。
子どものボイストレーニングは、声の成長段階やレッスン内容の確認点が大人とは異なります。詳しくは子どものボイストレーニングで扱っています。
教室を見るときは、設備や知名度だけで判断せず、実際に何を学ぶのか、どのようにレッスンを進めるのかを合わせて確認します。録音やマイクを使った歌唱を学びたい場合には、そうした設備があるかどうかも確認事項になります。
| 確認すること | 実際に見るポイント |
|---|---|
| 学ぶ目的 | 歌唱か、話す声か。どのジャンルを想定しているか |
| 講師の専門 | どの歌唱様式や分野を学び、指導しているか |
| 発声と歌唱の関係 | 発声練習だけか、実際の楽曲まで扱うか |
| 教材・レパートリー | 希望する曲や様式に対応しているか |
| レッスンの方法 | ピアノ伴奏、音源、マイク、録音などをどう使うか |
| 練習の方法 | レッスン以外の時間に何へ取り組むか |
| 発表の機会 | 必須か任意か、どのような形式か |
講師の経歴や学んできた分野は、その講師がどの領域を専門としているかを知る手掛かりの一つです。あわせて、実際に扱う教材やレパートリー、説明の仕方、指導の方針を確認すると、自分の目的との適合を判断しやすくなります。
料金、レッスンの頻度、振替、退会条件といった一般的な比較項目については、音楽教室の選び方で整理しています。
体験レッスンの中で、声の出しやすさや響き方に変化を感じることはあります。ただし、その変化が別の日にも再現できるのか、学習として定着していくのかは、一度の体験だけでは判断できません。
体験レッスンでは、長期的な効果を測ろうとするよりも、講師が現在の状態をどのように捉えるか、説明が理解しやすいか、質問に具体的に答えてもらえるか、これからの学び方をイメージできるかを確認するとよいでしょう。目的とレッスン方法が合っているかを確かめる場として使うと、判断を誤りにくくなります。
レッスンが実際にどのように進むのかについては、声楽レッスンは何をする?で流れを説明しています。
通えます。多くの教室が初心者を受け入れており、呼吸や姿勢といった基礎から始められます。譜面が読めない状態で始める方もいます。始める前に、初心者にどのような進め方をしているかを確認しておくと安心です。
教室によります。両方を扱う教室もあれば、どちらかに重点を置く教室もあります。希望する場合は、実際に扱っている楽曲や、講師がどの様式を指導しているかを確認してください。
体験レッスンで分かるのは、説明の仕方や質問への答え方、レッスンの進め方が自分に合うかといった点です。声がどう変わっていくかを一度で判断することはできません。複数の教室を体験して比べる方法もあります。
基本的な確認事項は重なりますが、声の成長段階に応じた配慮や、続けやすい進め方など、子ども特有の観点があります。子どものボイストレーニングで詳しく扱っています。
声がれや声の出しにくさが続く場合は、まず耳鼻咽喉科でご相談ください。声帯の状態によっては、発声の練習を控えたほうがよい場合もあります。教室選びの前に、声の健康について確認しておくとよいでしょう。
「ボイストレーニング」という名称は同じでも、扱う歌唱様式やレッスンの内容は教室によって異なります。クラシック声楽を基盤とする指導とポピュラー音楽を中心とする指導は、どちらが上ということではなく、目的によって適したものが変わります。
名称や設備、知名度だけで判断せず、自分が何を歌いたいのか、その教室が実際に何を教えているのかを確かめること。それが、教室選びで迷いを減らすいちばんの近道です。
クラシック音楽を基盤とした声楽・ボイストレーニングを検討されている方は、下記もご覧ください。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」