チェロによるアンサンブルの魅力——編成・作品・始め方

チェロだけで構成する「チェロ・アンサンブル(チェロアンサンブル)」には、二重奏から十数人の大編成まで幅があります。チェロは低音域を担うだけでなく高い音域まで演奏できるため、同じ楽器だけの合奏でも、旋律・内声・低音を分担できます。この記事では、チェロによるアンサンブルの魅力を、編成ごとの響きの違い、演奏される作品、レパートリーが広がった経緯、そして始め方の順に整理します。

チェロ・アンサンブルの魅力——一つの楽器で旋律から低音まで

チェロは音域の広い楽器です。低音を支えることも、旋律を歌うこともできます。当教室のチェロ講師も、オーケストラや室内楽では中・低音域で他の楽器を支える役割を担うことが多く、ソロでは低音から高音域まで演奏される、と説明しています。

その特性を同じ楽器だけで集めたものが、チェロ・アンサンブルです。音色の性質が近いため和声が溶け合いやすく、低音の厚みは他の編成では得にくいものです。一方で、全員が同じことをするわけではありません。旋律・対旋律・伴奏・低音といった役割を奏者が分担し、曲の中で入れ替わっていきます。人の声を思わせる響きのなかで役割が移り変わることが、チェロ・アンサンブルの魅力の中心にあります。

編成で変わる楽しみ——二重奏から大編成まで

二重奏では、2本の旋律の対話がはっきり聞こえます。後述するように教育目的で書かれた作品が残っており、先生と生徒、あるいは経験の異なる二人でも取り組める編成です。

三重奏・四重奏になると、内声や低音を含めて役割分担の幅が広がります。この規模では、原曲に加えて、他の編成の作品を編曲したものも演奏されています。

八本、十二本と編成が大きくなると、同じチェロだけでも厚みのある多声的な響きを作れます。どの編成・作品が適しているかは、演奏者の技術や人数によって変わります。

チェロ・アンサンブルで演奏される作品

二重奏で取り組める作品例として、19世紀のチェロ教育者セバスティアン・リーの《6 Duos faciles et progressifs(6つのやさしい段階的二重奏曲)》作品60があります。題名のとおり、段階を踏んで学べるように書かれています。オペレッタで知られるオッフェンバックは、自身がチェロの名手でもあり、《Cours méthodique de duos(二重奏のための体系的教程)》を作品49から54まで6巻にわたって残しました。研究機関のブリュ・ザーヌ財団によれば、6巻は難易度の順に並び、作品49が最もやさしい段階にあたります。

チェロ合奏のための作品としては、ヴィラ=ロボスの《ブラジル風バッハ 第1番》が知られています。1930年に書かれた2つの楽章に1938年に第1楽章が加えられた作品で、チェロだけの合奏のために書かれ、カザルスに献呈されました。なお、同じ作曲家の《第5番》はソプラノと8本のチェロという特徴的な編成です。

12本のチェロのための作品としては、ユリウス・クレンゲルの《ヒムヌス》(1920年)があります。この曲は、次に述べる「12人のチェリスト」の出発点になりました。

ベルリン・フィル「12人のチェリスト」とレパートリーの広がり

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の公式サイトによれば、1972年、オーストリア放送協会(ORF)の依頼で、同楽団のチェロ奏者たちがザルツブルクでクレンゲルの《ヒムヌス》を演奏・録音しました。その響きが奏者と聴衆に強い印象を残し、「12人のチェリスト」として常設の活動を続けることが決まったとされています。

結成当初、12本のチェロのためのレパートリーはまだ乏しく、その後、ボリス・ブラッハーをはじめとする作曲家への委嘱作品と、他の編成の作品の編曲によって開拓されていきました。チェロだけの合奏のために書かれた作品と編曲が今日これだけ演奏されている背景には、こうした取り組みがあります。

チェロ・アンサンブルを始めるには

チェロ・アンサンブルは、チェロを弾けるようになった先にある楽しみです。楽器そのものを始める段階については、チェロを始めるにはで、体格や分数楽器、教室の選び方を整理しています。構え方や運弓の基本はチェロの奏法と弾き方をご覧ください。

合奏へ進む順序としては、個人レッスンで構え・弓・音程の基礎を整え、先生との二重奏で「相手の音を聴きながら弾く」経験を重ね、そのうえで仲間との三重奏以上へ広げていく形が考えられます。二重奏の段階では、前述のリーやオッフェンバックのような教育目的の作品が助けになります。

合奏で実際に何が働いているか——他の奏者を聴きながら調整する、時間と呼吸を共有する、言葉を使わずに合図を交わす、全体のなかでの役割を捉える——については、アンサンブルで求められる協調性とはで詳しく扱っています。

当教室のチェロクラスは個人レッスンが基本です。講師には、オーケストラでの演奏経験に加え、弦楽合奏やチェロ・アンサンブルの企画を重ねてきた奏者がいます。合奏に進みたい方は、レッスンの中でご相談ください。

まとめ

チェロによるアンサンブルの魅力は、一つの楽器で旋律から低音までを担い、人の声を思わせる響きのなかで役割が移り変わるところにあります。二重奏にはリーやオッフェンバックの教育的な作品、チェロ合奏にはヴィラ=ロボスの《ブラジル風バッハ 第1番》、12本のチェロにはクレンゲルの《ヒムヌス》があり、1972年に結成された「12人のチェリスト」の委嘱と編曲によってレパートリーが広がってきました。

始めるには、個人レッスンで基礎を整え、先生との二重奏から仲間との合奏へと段階を踏む進み方があります。まずは体験レッスンで、楽器の音色と構え方を確かめてみてください。

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