さまざまな楽器で編成されるオーケストラは、華やかなコンサートの最高峰です。演奏の主役となるクラシック音楽は、歴史の中で洗練されてきた多様な作品群です。
ヴァイオリンやチェロなどの弦楽器は主旋律や和音を担当し、フルートやトランペットなどの管楽器は豊かな音色と迫力を添えます。ティンパニーやシンバルといった打楽器はリズムやアクセントを支えます。
オーケストラの生音は、アンプやマイクを通さずにホール全体に響き渡り、臨場感あふれる音楽体験を生み出します。
※オーケストラは主に弦楽器を中心に構成されるのが特徴で、管楽器主体の吹奏楽(ウインドオーケストラ)とは編成や響きが異なります。
オーケストラの起源は、18世紀半ばのヨーロッパにさかのぼります。背景には、中世・ルネサンスを経て発展した西洋音楽の流れがあります。
中世のグレゴリオ聖歌は、西洋音楽理論や記譜法の基礎を築きました。そこから多声音楽(ポリフォニー)が発展し、ルネサンス期には音楽・美術・建築が花開き、今に残るクラシック音楽の礎が築かれます。
バロック時代のバッハやヘンデル、古典派のモーツァルトやベートーヴェンらが活躍し、オーケストラ編成や交響曲、協奏曲の形が整っていきました。
バロック期(17世紀後半〜18世紀半ば頃)には宮廷文化の中でオペラやバレエが発展し、器楽合奏が大きく発展しました。これがオーケストラの始まりの一つです。18世紀後半の古典派では、都市の市民階級に向けたコンサートが広がり、オーケストラは大規模化していきます。
クラシック音楽の発展とともに、オーケストラの楽器編成も進化してきました。
16世紀に北イタリアで誕生したヴァイオリンは改良を重ね、17世紀初頭にはモンテヴェルディのオペラ《オルフェオ》で伴奏楽器として活躍しました。これがオーケストラの弦楽器合奏の原型となります。
バロック時代には弦楽器中心の編成に木管・金管・打楽器が加わり、バッハやヘンデルが管弦楽組曲を作曲。古典派時代には、モーツァルトやハイドンがクラリネット、ピッコロ、のちにシンバルやトライアングルなど打楽器を取り入れ、現在のオーケストラの基礎を築きました。
19世紀ロマン派ではベルリオーズやマーラーらによってさらに大編成化が進む一方、サロン音楽のような室内楽的文化も発展し、多様な演奏形態が広がりました。ショパンやリストの作品が親しまれたのもこの頃です。
現代では、オーケストラ編成は作品や指揮者の解釈によって多様に変化し、伝統と革新が共存しながら、時代ごとの表現が今も新しい感動を生み出しています。
西洋のオーケストラ文化は明治時代の開国を契機に日本に伝わりました。
日本の伝統音楽(雅楽、謡曲、浄瑠璃など)とは編成も音色も異なるもので、当初は馴染みの薄い存在でした。雅楽における笙やひちりき、琵琶、太鼓などは編成上オーケストラと似た役割を持ちながら、音楽スタイルは大きく異なります。
明治以降、山田耕筰が日本人初の交響曲を作曲し、近衛秀麿や実業家たちがオーケストラの常設化を支援。1925年、日本交響楽協会が設立され、新交響楽団(現・NHK交響楽団)が日本初のプロオーケストラとして活動を開始しました。
彼らの尽力により西洋クラシック音楽は全国に普及し、日本各地でオーケストラや室内楽団が生まれていきました。
オーケストラは、数世紀にわたる音楽文化の集大成です。各楽器の歴史や音楽家たちの革新が重なり、現代に至る豊かな響きを生み出しています。
日本でも、クラシック音楽やオーケストラは文化遺産として定着し、多くの人々に感動を届けています。オーケストラの歴史を知ることで、コンサートの楽しみが一層深まるでしょう。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」