相対音感は、基準となる音や調を手がかりに、音同士の関係を捉える力です。単音を聴いてその音名を言い当てる練習ではなく、基準からどれだけ離れているかを聴き、歌って再現し、楽譜や楽器で確かめていく訓練で伸ばしていきます。この記事では、二つの音から始めて短い旋律へ広げ、視唱や聴音、耳コピへつなげるまでの手順を扱います。相対音感そのものの説明は相対音感とは?をご覧ください。
まず必要なのは、音と音の関係を聴き取る力です。ある音を基準として、次の音が上なのか下なのか、どれくらい離れているのかを判断します。
ここで大切なのは、基準が与えられている状態で聴くことです。基準のない状態で音名を言い当てる練習は、相対音感ではなく別の能力を使う課題になります。
聴き取るだけでは、捉えた関係が正しいかどうかを確かめられません。自分で歌う、あるいは楽器で音を出すことで、頭の中の音と実際の音を照らし合わせられます。
語学の学習で、聞き取りと発話の両方が必要なのと似た関係です。聴くことと出すことを行き来しながら、少しずつ精度が上がっていきます。
練習を始める前に、基準となる音を一つ鳴らして耳に入れておきます。曲の中で練習する場合は、その調の主音を確認しておくと、途中で迷いにくくなります。
基準の音を鳴らしたあと、もう一つ音を鳴らします。最初は、それが基準より高いか低いかだけを判断します。細かい音程を気にする必要はありません。
上下が安定して分かるようになったら、離れ方に注意を向けます。隣り合う音か、少し離れているか、大きく跳ぶかという段階から始め、慣れてきたら度数で捉えていきます。
聴き取ったら、その二つの音を自分で歌ってみます。声に出すことで、頭の中で捉えた関係が実際の音になっているかを確かめられます。
歌ってから、鍵盤などで実際の音を鳴らして照らし合わせます。順序が大切です。先に楽器で探してしまうと、耳で捉える段階を飛ばすことになります。
二つの音に慣れてきたら、少しずつ音数を増やします。いきなり長い旋律に取り組むより、2音から4音程度のまとまりを繰り返すほうが、どこでつまずいているかを見つけやすくなります。
聴いたまとまりを、そのまま歌ってみます。音名で歌う方法もあれば、母音だけで歌う方法もあります。まずは音の動きを正確になぞることを目指します。
楽譜を見て歌う視唱と、聴いた音を楽譜に書き取る聴音は、どちらも音の関係を扱う訓練です。二つの音や短いまとまりで練習したことが、そのまま土台になります。聴音の具体的な進め方は聴音とは?で扱っています。
ドレミには二つの使い方があります。音名は、音の高さそのものに付いている呼び名です。階名は、その音が調の中でどのような位置を占めるかを表す呼び名です。
調の主音をドとして読む方法を移動ド唱法、音の高さに対応した呼び名で読む方法を固定ド唱法といいます。現在の小学校・中学校の学習指導要領では、相対的な音程感覚を育てるために、歌唱指導で移動ド唱法を適宜用いることが示されています。
どちらが正しいというものではなく、目的によって使い分けられています。相対音感の訓練という文脈では、調の中での位置を意識する読み方が手がかりになります。
音源を聴いて、鳴っている音や和音を判別することを耳コピといいます。ここまでの練習が積み重なると、取り組みやすくなります。
進め方は基礎練習と同じです。まず曲全体を通して聴き、調と基準になる音を確認します。次に短いまとまりへ分け、耳と声で捉えてから楽器で確かめます。
和音については、一つひとつの構成音をすべて聴き分けようとしなくても、響きの性質から捉えられる場合があります。ただし、最低音だけで和音を決めることはできません。同じ和音でも、どの音が下に来るかによって最低音は変わります。複数の構成音の関係や、前後の調の流れも手がかりになります。
思うように聴き取れないときは、次の点を順に見ていくと、どこに手を入れればよいかが絞り込めます。
| つまずき | 試したいこと |
|---|---|
| 基準音や主音を途中で見失う | 区切りごとに基準をもう一度確認する |
| 一度に聴く範囲が長すぎる | 2〜4音程度の短いまとまりに分ける |
| 聴く前に楽器で音を探してしまう | まず歌う、または音の動きを予測してから楽器を使う |
| 和音を一音ずつ当てようとする | 響きの性質、構成音の関係、調の流れから段階的に捉える |
| 同じところで繰り返し間違える | 間違えた音程や進行だけを取り出して練習する |
鍵盤楽器は、確認の道具として扱いやすい楽器です。
一つは、鍵盤ごとの音の高さが演奏中に固定されていることです。歌や弦楽器のように自分で音程をつくる必要がないため、二つの音の関係を確かめる場面では手間が少なくなります。
もう一つは、低い音が左、高い音が右と並んでいることです。音の高低の関係を、耳と目の両方で確認できます。
発展的な練習として、同じ短い旋律や音型を別の調へ移して歌ったり弾いたりする方法があります。高さが変わっても音同士の関係は変わらない、という相対音感の考え方を確かめられます。音階や分散和音を複数の調で練習することも、この延長にあります。鍵盤での基礎的な練習はピアノの基礎練習で扱っています。
鍛えられます。相対音感は基準となる音との関係を捉える力なので、基準を与えたうえで練習を進めます。絶対音感については、幼少期からの音楽経験との関連が長く研究されてきましたが、習得の時期に関する研究は現在も続いています。
意味があります。二つの音の関係を聴く、歌って再現する、楽器で確かめるという手順は、年齢にかかわらず取り組めます。進み方には個人差があります。
なくても練習は始められます。基準となる音を出せるものがあれば、まず二つの音から取り組めます。鍵盤があると、音の高低を目でも確認できるという利点があります。
練習の段階では確認しておくことをおすすめします。基準を持たずに音名を言い当てる課題は、相対音感とは別の力を使うことになります。
耳コピは有効な方法の一つですが、いきなり曲全体に取り組むと、どこでつまずいているかが分かりにくくなります。二つの音や短いまとまりの練習と組み合わせると進めやすくなります。
相対音感の訓練は、基準を確認することから始まります。二つの音の関係を聴き、歌って再現し、楽譜や楽器で確かめる。この往復を短いまとまりで繰り返していくと、扱える範囲が少しずつ広がっていきます。
視唱や聴音、耳コピは、その延長にある応用です。音楽の基礎訓練の全体像はソルフェージュとは?で扱っています。
当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」