クラシックギターを手にしたものの、何から練習すればよいか迷う方は少なくありません。結論から申し上げると、練習はおおむね次の順序で進めます。
この記事では、ナイロン弦のクラシックギターを対象に、この6つのステップを順に解説します。あわせて、始めたばかりの時期と基本操作に慣れてきた時期に分けた練習メニュー例、最初に取り組みやすい曲もご紹介します。

クラシックギターは、一般にナイロン弦を張り、右手の指で弦を弾いて演奏します。スチール弦を使うアコースティックギターや、アンプにつないで演奏するエレクトリックギターとは、弦の感触、構え方、右手の使い方が異なります。弦間が比較的広く、1本ずつの弦を独立して扱いやすい点も特徴です。
この記事では、ナイロン弦のクラシックギターの練習方法を扱います。楽器のサイズや種類を選ぶ段階の方は、クラシックギターの選び方をご覧ください。
練習方法を考える前に、楽器と楽譜の最低限の約束事を押さえておくと、その後の練習がなめらかに進みます。
楽器各部の名称
ヘッド(糸巻きのある先端)、ネック、フレット(指板を区切る金属の棒)、サウンドホール、ブリッジ、ボディー。教則本やレッスンでは、これらの名称を前提に説明が進みます。
弦の番号
いちばん細く高い音の弦が1弦、いちばん太く低い音の弦が6弦です。番号と太さの関係が逆になりやすいため、最初に確認しておきます。
指の記号
クラシックギターの楽譜では、右手の指をアルファベットで表します。親指は p、人さし指は i、中指は m、薬指は a です。左手は人さし指から順に1・2・3・4の数字で示します。この記号は運指を読み解く鍵になりますので、早い段階で覚えておくと役立ちます。
楽譜そのものの読み方に不安がある方は、楽譜の読み方もあわせてご覧ください。
構え方が安定すると、左右の手を無理なく動かしやすくなります。右利きの方の場合、一般的な構え方は次のとおりです。
ただし、体格や手の大きさ、使用する支持具によって適した角度は変わります。ヘッドの高さや足台の段数は、痛みや強い窮屈さを感じない範囲で調整してください。慣れないうちは鏡で確認したり、動画で自分の姿を撮って見直したりすると、癖に気づきやすくなります。
構えが決まったら、弾き始める前に必ずチューニングを行います。弦を押さえずに鳴らした状態(開放弦)で、6弦から1弦までを次の音に合わせます。
| 弦 | 音(音名) | 読み |
|---|---|---|
| 6弦 | E | ミ(低い) |
| 5弦 | A | ラ |
| 4弦 | D | レ |
| 3弦 | G | ソ |
| 2弦 | B | シ |
| 1弦 | E | ミ(高い) |
初心者の方は、クリップ式のチューナーやチューニングアプリを使うと確実です。糸巻きは少しずつ回します。音が目標より高くなった場合は、いったん少し低くしてから、弦を締めながら目標の音へ近づけると安定しやすくなります。
ナイロン弦は張り替えた直後や気温・湿度の変化で音程が動きやすいため、練習のたびに合わせ直す習慣をつけてください。毎回同じ基準音に合わせることは、音の高さを意識して聴く習慣にもつながります。
クラシックギターでは、右手の指で弦を弾き分けます。基本的な奏法として、アポヤンドとアルアイレがあります。
アポヤンドは、弦を弾いた指を隣の弦に触れさせて止める奏法です。旋律を明確に響かせたい場面などで用いられます。
アルアイレは、弦を弾いた指が隣の弦に触れず、手のひら側へ自然に動く奏法です。アルペジオや和音など、複数の弦を続けて扱う場面で用いられます。
どちらから学ぶかは、教材や指導方針によって異なります。最初は一つの奏法に絞り、音量や音色をそろえて弾くことを目標にするとよいでしょう。アポヤンドを練習する場合は、まず1弦の開放弦を人さし指(i)と中指(m)で交互に弾き、弾いた指を2弦に軽く触れさせて止めます。慣れないうちは音が弱くなったり、隣の弦まで鳴らしてしまったりしますが、これは誰もが通る段階です。速さを求めず、一音ずつ同じ音量・同じ音色で鳴らすことを目標にしてください。
爪について
クラシックギターでは、右手の爪と指先を使って音色をつくる奏法が広く用いられています。一方、爪を使わず指先で弾く方法もあります。爪を使う場合は、長く伸ばしすぎず、弦に引っかからないように形と断面を整えます。指を手のひら側から見て爪先がわずかに見える程度が一つの目安とされますが、適した長さや形には個人差があります。レッスンを受けている方は、講師に確認しながら調整するとよいでしょう。
左手は弦を押さえる役割を担います。ここでも形が音を決めます。
音が鳴りにくい、あるいは音が濁る場合は、指の角度、押さえる位置、力の入れ方、隣の弦への接触を順に確認します。それでも改善しない場合は、弦や楽器の状態が影響している可能性もあります。
最初のうちは、指を一本ずつ順番に置くような押さえ方になっても構いません。反復するうちに、複数の指が同時に所定の位置へ動くようになっていきます。なお、人さし指で複数の弦をまとめて押さえるセーハ(バレー)は負荷が大きいため、基礎が固まってからで十分です。
「何をどれだけ練習すればよいか」は、初心者の方が最もつまずきやすい点です。楽器を手にしたばかりの時期と、基本操作に慣れてきた時期とで、内容を分けて考えます。以下はいずれも1回30分を想定した配分例です。時間が取れない日は、各項目を半分にしても構いません。
始めたばかりの時期
| 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 5分 | チューニングと構えの確認 | 毎回同じ状態から始める |
| 5分 | 開放弦を鳴らす右手の練習 | 音量と音色をそろえる |
| 5分 | 左手で1音ずつ押さえる練習 | 指を立てる形をつくる |
| 5分 | 楽譜と弦・フレットの対応確認 | 読譜と運指を結びつける |
| 10分 | 短いやさしい旋律 | 音楽として弾く体験 |
基本操作に慣れてきた時期
| 時間 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 5分 | チューニングと構えの確認 | フォームを毎回整える |
| 5分 | 右手の交互奏(i・m) | 音の粒をそろえる |
| 5分 | 左手の運指練習(1→2→3→4) | 指の独立と脱力 |
| 5分 | 音階(ハ長調から) | 両手の連携と読譜 |
| 5分 | アルペジオ(p・i・m・a の基本形) | 右手のパターン定着 |
| 5分 | 曲(やさしい練習曲) | 音楽として仕上げる |
練習の質を高める3つの考え方
基礎練習は、単調に感じられることがあるかもしれません。小林洋子ほか『音楽教育のススメ 改訂版』(幻冬舎)では、芸道の「守・破・離」に触れ、まず基本の型を身につけることが、その先の自由な表現につながると述べています。開放弦や音階の反復も、自分らしい音楽をつくるための土台になります。
基礎練習と並行して、早い段階から曲に触れることをおすすめします。1曲弾けるようになる体験は、次の練習を続ける力になります。
「愛のロマンス(禁じられた遊び)」は、クラシックギターを始めた方に人気の高い曲です。ただし、右手のアルペジオや左手の和音、後半のセーハなどが必要になります。最初の一曲というよりも、基礎を学んだあとの目標曲として考えるとよいでしょう。
選曲は、いま身についている技術に対して少しだけ難しいものが理想です。難易度の判断は独学では難しい部分ですので、迷う場合はレッスンで相談してみてください。
基本的な奏法が身につき、やさしい曲を1曲仕上げられるようになったら、次の段階に進みます。セーハや音域の広い音階、より複雑なアルペジオといった課題はクラシックギターの練習方法【中級者編】で、さらに先の技術についてはクラシックギターの練習方法【上級者編】で解説しています。
学び方については、独学とレッスンのいずれにも利点があります。独学は自分のペースで進められる一方、構え方や右手の角度といったフォームの癖は自分では気づきにくく、あとから整えるには時間がかかります。それぞれの特徴はクラシックギターを独学で学ぶ利点と注意点で整理しました。レッスンを検討される場合は、クラシックギター教室の選び方と体験レッスンもあわせてご覧ください。
まず安定して構えられるようにし、次にチューニングを覚えます。そのうえで右手で弦を弾く練習、左手で弦を押さえる練習へと進み、音階やアルペジオの基礎練習を習慣にしていくのが一般的な順序です。
決まった正解はありません。始めたばかりの時期は、1回15〜30分程度でも、間隔を空けずに続けることに意味があるといわれます。まとめて長時間行うより、短くても頻度を保つほうが定着しやすいためです。
短い単旋律であれば比較的早い段階から取り組めますが、演奏が安定するまでに必要な期間は、練習の頻度や取り組む曲によって異なります。期間の長短よりも、続けられる練習の形をつくることが結果を左右します。
右手の爪と指先を使う奏法が広く用いられていますが、爪を使わず指先で弾く方法もあります。爪を使う場合も、長く伸ばしすぎず、弦に引っかからないように形を整えます。適した長さには個人差がありますので、レッスンでは講師に確認しながら調整していきます。
クラシックギターでは、コードをかき鳴らすよりも、和音を分散させて弾くアルペジオの形で扱うことが多くなります。まずは単音の弾き方、左右の手の基本、楽譜の読み方を身につけ、そのあとに和音やアルペジオへ進むと理解しやすくなります。
教則本や動画を用いて独学で始める方もいます。ただし、構え方や右手の角度といったフォームの誤りは自分では気づきにくく、あとから整えるには時間がかかります。メリットと注意点はクラシックギターを独学で学ぶ利点と注意点で詳しく整理しています。
クラシックギターの練習は、構え方、チューニング、右手、左手、基礎練習、曲という順序で進めるのが基本です。とりわけ最初の時期に身につけた構えと右手の形は、その後の音色と練習の進み方に影響します。
思うように指が動かないのは、始めたばかりであれば当然のことです。速さを追わず、一音ずつ丁寧に鳴らす時間を積み重ねてください。開放弦の反復も、音階も、いつか自分の音楽を自分の言葉で語るための準備になります。

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」