音楽センスとは?センスがある人の特徴と5つの力の伸ばし方

「音楽にはセンスが必要」とよくいわれます。同じように練習しても、伸びやすい人となかなか思うように進まない人がいて、センスや素質の差だと感じることもあるかもしれません。

けれども、音楽を始めるために、特別なセンスがあらかじめ備わっている必要はありません。そもそも「音楽センス」は、音楽学や音楽心理学で一つの能力だけを指す厳密な専門用語ではなく、日常的に複数の力をまとめて表す言葉です。

この記事では、音楽を学ぶときに自分の課題を捉えやすくするため、音楽のセンスを五つの力に整理して考えます。音楽教育の現場でも、センスがあるかどうかで人を分けるのではなく、一つひとつの力をどう育てるかを大切にしています。

音楽センスとは?——複数の力をまとめて呼んだ言葉

「音楽センス」は、音を聴き分ける、拍やリズムを捉える、音楽の構造を理解する、声や楽器で表すといった、複数の力をまとめて表す言葉として使われています。ひとつの決まった能力を指すわけではなく、学術的に確立した単一の指標があるわけでもありません。

「センスがある人」というと、生まれつき特別な才能を持った人を思い浮かべがちです。しかし、そう見える力は、いくつかの具体的な力に分けて捉えることができます。ここでは、音楽を学ぶうえで課題を見つけやすくするための実用的な整理として、五つの力に分けて説明します。これは絶対的な分類ではありませんが、自分の得意・不得意を捉え、次に何を伸ばすかを考える手がかりになります。

音楽センスがある人に見られる5つの力

音楽のセンスは、大きく次の五つの力に分けて捉えることができます。

内容具体例
① 音を聴き分ける力音高・音程・和音・音色・音量・響きの違いに気づく音程のずれを聴く、声部のバランスを聴く
② 拍・リズム・時間を扱う力拍子・リズム・テンポ・間・他者とのタイミングを捉える一定の拍を保つ、相手の呼吸に合わせる
③ 音楽を記憶し、理解する力旋律や和声を記憶し、フレーズ・形式・調性・様式を捉える曲のまとまりを理解する、次の展開を予測する
④ 身体・声・楽器で音にする力聴いたことや考えたことを、身体の動きによって音として実現するタッチ、運指、呼吸、発声、弓の運び
⑤ 表現し、創造し、応答する力解釈・音色・強弱・フレージング・即興・作曲・他者への応答曲に合う表現を選ぶ、その場で演奏を調整する

楽譜を読む力は、③の「記憶し、理解する力」の一部として位置づけられます。楽譜を使う音楽では、書かれた情報を読み取り、実際の響きへ結びつける力も含まれますが、耳で覚えて演奏する音楽や即興のように、楽譜を使わない音楽もあります。楽譜を読めることは、音楽性そのものの絶対条件ではありません。

また、音楽への関心や好み、これまで触れてきた音楽は、これら五つの力の育ち方や表れ方に影響します。ただし、感じ方に優劣を付けるものではありません。なお、声を使って音にする力については歌唱力とは何かで、音を聴き分ける力については、音の高さの側面を音感で、音色や聴いた音の保持などを含む側面を聴く力で、それぞれ詳しく解説しています。

「音楽センスがある」と感じられる場面は、活動によって異なります。演奏では、自分の音を聴いてその場で調整できる人が音楽的に見えることがあります。作曲では、音の組み合わせや曲の構造を考える力が表れます。アンサンブルでは、ほかの奏者の音に応答する力が大切になります。すべての力が同じ水準でそろっている必要はなく、人によって得意な組み合わせは異なります。

音楽センスは生まれつきで決まるのか

音楽に関する力には個人差があり、その違いには、生まれ持った特性、これまでに触れてきた音楽、学習経験、練習方法、環境、動機などが複合的に関わります。したがって、生まれつきの違いがまったくないともいえませんが、練習すれば全員が同じ水準になるともいえません。

大切なのは、現在の状態を「センスがない」と固定的に捉えないことです。音を聴き分ける、拍を捉える、身体で音をつくるといった具体的な力は、適切な練習や経験によって変化していきます。音の高さを捉えることに難しさを感じる場合も、聴き取りと再現のどこに課題があるかを分けて確認すると、取り組む内容を具体化しやすくなります。実際に、特定の音の高さを聴き分ける課題では、大人になってからの訓練で成績が改善したという報告もあります。ただし、これは音楽のセンス全体が一様に身につくことを示すものではありません。

5つの力を伸ばす方法

音楽のセンスは五つの力に分けられるからこそ、伸ばし方もそれぞれに合わせて考えると取り組みやすくなります。

練習の例
音を聴き分ける二つの演奏を聴き比べる、自分の録音を聴く、旋律や和音を聴き取る
拍・リズム・時間を扱う拍を感じながら歩く・手を打つ、リズムを細かく分けて確認する、合奏で合わせる
記憶し、理解する短い旋律を覚える、フレーズごとに区切る、形式や和声を確認する、楽譜と音を結びつける
身体・声・楽器で音にする動きをゆっくり確認する、必要な部分だけを取り出して練習する、余分な力みを減らす
表現・創造・応答する強弱や音色を変えて試す、複数の解釈を比べる、即興する、ほかの人と合わせる

これらの力の土台となる読譜やリズム、聴音は、ソルフェージュとして横断的に学ぶことができます。当教室でも、音を聴く、歌う、リズムを捉える、楽譜を読むといった力をソルフェージュを通して育てることを大切にしており、こうした教育方針は書籍『音楽教育のススメ 改訂版』でも紹介しています。

どの力も、自分ひとりでは気づきにくい癖があります。指導者に客観的に聴いてもらい、どこをどう変えるとよいかを具体的に教わることで、自分では気づきにくい課題を整理しやすくなります。

センスの有無より、具体的な課題を見る

音楽が好きだという気持ちは、音へ注意を向け、繰り返し取り組むきっかけになります。ただし、好きであれば常に練習を続けられるわけではなく、毎回楽しいと感じる必要もありません。

思うように進まないときは、「センスがない」と結論づけるのではなく、音を聴き取る段階、楽譜を理解する段階、身体で音にする段階のどこに難しさがあるのかを確認します。課題を具体的にし、今の段階に合った方法で取り組めることが、学び続けるうえで何より役立ちます。現在できていることだけで自分を判断せず、次に取り組む課題を一つずつ見つけていきましょう。

よくある質問

音楽センスがある人の特徴は?

特定の性格や生まれつきの資質というより、次のような行動に表れます。音の違いや変化に気づく、拍や流れを保ちながら必要に応じて調整する、曲の構造や役割を捉える、自分が意図した音と実際の音の違いを聴く、助言や録音をもとに演奏を変えられる、曲や場面に合った表現を選ぶ、といったことです。

音楽センスは生まれつきで、才能がないと無理ですか?

そのようなことはありません。個人差はあり、その違いには生まれ持った特性や経験、学習、環境、動機などが複合的に関わりますが、現在の状態が固定されているわけではありません。「才能がないから」とあきらめる必要はありません。

音楽センスは大人からでも伸ばせますか?

伸ばせます。変化の程度や必要な期間には個人差がありますが、音を聴き分ける力やリズムを扱う力、記憶し理解する力などは、大人になってからの練習でも変化していきます。

作曲や選曲のセンスも、同じように伸ばせますか?

作曲や選曲で求められる感覚も、一つの才能だけで決まるものではありません。さまざまな作品を聴くこと、曲の構造や様式を知ること、実際に組み合わせを試すこと、ほかの人の反応を確かめることなどによって、判断の手がかりが増えていきます。ただし、どの表現を好むかには個人差があり、一つの正解があるわけではありません。

まとめ

音楽のセンスは、生まれ持った一枚岩の才能ではなく、音を聴き分ける、拍を扱う、理解する、音にする、表現するといった複数の力の集まりです。その力の組み合わせは人によって異なり、今の状態も固定された適性ではありません。「センスがある・ない」で線引きするのではなく、次にどの力を伸ばしたいのかを具体的に捉えることが、確かな一歩になります。

小林音楽教室では、一人ひとりの得意なところや伸ばしたいところに寄り添いながら、音楽の力を育てるレッスンを行っています。音楽をより深く楽しみたい方は、ぜひ体験レッスンにお越しください。

体験レッスン申込はこちら

当教室主宰の著書「音楽教育のススメ(幻冬舎)」

音楽教育のススメ(幻冬舎)